部活動の帰りなのでしょうか。高校生が、笑いあいながら、楽しそうに坂を下りて行きます。 「たっくん、坂道で大変でしょう。だいじょうぶ?」 ちいちゃんも心配そうに声をかけます。 「平気だよ。日ごろ、サッカーできたえているからね」 と言ってはみたものの、だんだん息があらくなっていくのが分かります。 坂の上からは何組もの高校生が下りてきますが、みんな話に夢中で、二人には目もくれません。 さすがのたっくんも、これ以上、上ることができなくなり、ブレーキをかけて一休みすることにしました。 そのときです。 「すみません。車いすを一緒に押してくれませんか?」 ![]() 「大変だね」 と言って、気持ちよく手を貸してくれました。 二人の助けで、車いすは、なんなく坂を上りきりました。 『そうか。困ったときには、自分から声をかければいいんだ。そしたら、気づいて協力してもらえるんだ』 たっくんは、ちいちゃんにまた一つ教えられたような気がしました。 「ありがとうございました」 二人は、ぴょこんと頭を下げました。 「気をつけてね」 手をふって、高校生はまた楽しそうにおしゃべりしながら、行ってしまいました。 ちいちゃんとたっくんは、何とも言えないあたたかい空気につつまれていたのでした。 |

