北海道こども基本条例(令和7年北海道条例第2号)
こどもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現に資するよう、こども施策の推進に関し、基本理念を定め、道の責務等を明らかにするとともに、道の施策の基本となる事項を定めることにより、社会全体でこども施策を総合的かつ計画的に推進することとするため、この「北海道こども基本条例」を制定しました。
第1章 総則
第1条(目的)
この条例は、こども施策の推進に関し、基本理念を定め、並びに道の責務並びに保護者、学校関係者等、事業者、こども・子育て支援団体等及び道民の役割を明らかにするとともに、道の施策の基本となる事項を定めることにより、社会全体でこども施策を総合的かつ計画的に推進し、もってこどもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現に寄与することを目的とする。
第2条(定義)
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) こども 心身の発達の過程にある者をいう。
(2) こども施策 次に掲げる施策その他のこどもに関する施策及びこれと一体的に講ずべき施策をいう。
ア 新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の各段階を経て、おとなになるまでの心身の発達の過程を通じて切れ目なく行われるこどもの健やかな成長に対する支援
イ 子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現に資するため、就労、結婚、妊娠、出産、育児等の各段階に応じて行われる支援
ウ 家庭における養育環境その他のこどもの養育環境の整備
(3) 保護者 親権を行う者、未成年後見人その他の者で、こどもを現に監護する者をいう。
(4) 学校関係者等 学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校をいう。)、児童福祉施設(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第7条第1項に規定する児童福祉施設をいう。)その他これらに類する施設(第6条において「学校等」という。)の職員その他のこどもの教育又は福祉に関連する職務に従事する者をいう。
(5) こども・子育て支援団体等 こどもの支援又は子育ての支援を行うことを目的とする法人その他の団体又は個人をいう。
第3条(基本理念)
こども施策は、日本国憲法、児童の権利に関する条約及びこども基本法(令和4年法律第77号。以下「法」という。)の精神にのっとり、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
(1) 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。
(2) 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法(平成18年法律第120号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。
(3) 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。
(4) 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。
(5) 国、道、市町村、保護者、学校関係者等、事業者、こども・子育て支援団体等及び道民が相互に連携し、及び協力して社会全体でこどもを支えるための取組を推進すること。
第4条(道の責務)
道は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、こども施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。
第5条(保護者の役割)
保護者は、基本理念にのっとり、こどもが生活のために必要な習慣を身に付けられるようにするとともに、自立心を育成し、こどもの健やかな成長及び発達並びにその自立を図るよう努めるものとする。
第6条(学校関係者等の役割)
学校関係者等は、基本理念にのっとり、学校等におけるこどもの安全を確保するとともに、こどもが安心して学び、及び育つことができる環境の整備に努めるものとする。
第7条(事業者の役割)
事業者は、基本理念にのっとり、その雇用する労働者の職業生活及び家庭生活の充実が図られるよう、必要な雇用環境の整備に努めるものとする。
第8条(こども・子育て支援団体等の役割)
こども・子育て支援団体等は、基本理念にのっとり、専門的知識又は経験を活用し、こどもの支援又は子育ての支援を推進するよう努めるとともに、道及び市町村が行うこども施策に連携協力するよう努めるものとする。
第9条(道民の役割)
道民は、基本理念にのっとり、こども施策について関心及び理解を深め、道及び市町村が行うこども施策に協力するよう努めるものとする。
第10条(市町村との連携協力)
道は、こども施策の実施に当たっては、市町村と連携するとともに、市町村が行うこども施策に協力するものとする。
第2章 基本的施策
第11条(こども計画)
知事は、こども施策を総合的かつ計画的に推進するため、法第10条第1項に規定する都道府県こども計画(以下この条において「計画」という。)を定めなければならない。
2 計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) こども施策についての基本的な考え方
(2) 具体的なこども施策
(3) 前2号に掲げるもののほか、こども施策を推進するために必要な事項
3 知事は、計画を定めるに当たっては、あらかじめ、こどもを含めた道民の意見を反映することができるよう必要な措置を講じなければならない。
4 知事は、計画を定めるに当たっては、あらかじめ、北海道こども施策審議会の意見を聴かなければならない。
5 知事は、計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 前3項の規定は、計画の変更について準用する。
7 知事は、毎年、計画に基づくこども施策の実施状況について公表しなければならない。
8 計画は、北海道青少年健全育成条例(昭和30年北海道条例第17号)第9条第1項に規定する基本計画、北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例(平成16年北海道条例第90号)第7条第1項に規定する計画その他条例の規定により知事が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。
第12条(こども施策に対するこども等の意見の反映)
道は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又は保護者その他の関係者の意見を反映させるため、これらの者からの意見の聴取その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 前項の規定による意見の聴取に当たっては、児童福祉法第27条第1項第3号に規定する措置を受けた者その他の意見の聴取に当たって十分な配慮が必要な様々な状況にあるこども又はその保護者その他の関係者の多様な意見を聴取し、その聴取した意見に適切に応答するために必要な措置を講ずるものとする。
3 道は、こどもがこども施策に対する理解を深めることができるよう、適切な情報提供を推進するものとする。
第13条(こどもの社会参加の促進)
道は、こどもが社会の一員として尊重され、年齢及び発達の程度に応じて、多様な社会的活動に参画することができる環境の整備を促進するものとする。
第14条(推進体制の整備)
道は、国、市町村、保護者、学校関係者等、事業者、こども・子育て支援団体等及び道民との連携の強化に努め、医療、保健、福祉、教育、療育等に関するこども施策が適切に行われるよう、社会全体でこどもを支える取組の推進に必要な体制を整備するものとする。
第15条(こどもの権利の周知及び擁護)
道は、こどもの権利を尊重し、擁護するため、この条例、法及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて道民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものとする。
2 道は、こどもが、全てのこどもが個人として尊重され、等しく権利が保障されていることを認識し、他者を尊重することができるようにするための必要な措置を講ずるものとする。
3 道は、いじめ、虐待等のこどもの人権侵害に対応し、その他こどもの不安又は悩みを解消することができるよう、こども又は保護者その他の関係者からの相談に対応する機関等の適切な周知及び普及啓発並びにこれらの者からの相談に対応する支援体制の充実を図るものとする。
第16条(こどもの居場所づくり)
道は、こどもの適切な遊び及び生活の場その他のこどもが地域において安全で安心して自分らしく過ごすことができる環境の整備を促進するものとする。
第17条(財政上の措置)
道は、こども施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第3章 北海道こども施策審議会
第18条(設置)
北海道におけるこども施策の推進を図るため、知事の附属機関として、北海道こども施策審議会(以下この章において「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、児童福祉法第8条第1項、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第25条及び子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第72条第4項に規定する審議会その他の合議制の機関とする。
第19条(所掌事項)
審議会の所掌事項は、次のとおりとする。
(1) 知事の諮問に応じ、こども施策の推進に関する重要事項を調査審議すること。
(2) 前号に掲げるもののほか、法令又は他の条例の規定によりその権限に属させられた事務
2 審議会は、こども施策の推進に関し必要と認める事項を知事に建議することができる。
第20条(組織)
審議会は、委員15人以内で組織する。
2 審議会に、特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、特別委員を置くことができる。
第21条(委員及び特別委員)
委員及び特別委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。
(1) 学識経験を有する者
(2) こども施策に関係する団体の役職員
(3) 事業者(法人にあっては、その役職員)
(4) 関係行政機関の職員又は市町村の連絡調整を図る団体の役職員
(5) こども又は保護者その他の関係者であって、公募に応じた者
(6) 前各号に掲げる者のほか、知事が適当と認める者
2 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 委員は、再任されることができる。
4 特別委員は、当該特別の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
第22条(会長及び副会長)
審議会に会長及び副会長を置く。
2 会長及び副会長は、委員が互選する。
3 会長は、審議会を代表し、会務を総理する。
4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。
第23条(会議)
審議会の会議は、会長が招集する。
2 審議会は、委員の2分の1以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
3 会議の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
第24条(部会)
審議会は、必要に応じ、部会を置くことができる。
2 部会は、審議会から付託された事項について調査審議するものとする。
3 部会に部会長を置き、会長が指名する委員がこれに当たる。
4 部会に属すべき委員及び特別委員は、会長が指名する。
第25条(会長への委任)
この章に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮って定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、令和7年4月1日から施行する。
(北海道こども施策審議会条例の廃止)
2 北海道こども施策審議会条例(令和6年北海道条例第2号)は、廃止する。
(北海道こども施策審議会条例の廃止に伴う経過措置)
3 この条例の施行の際現に前項の規定による廃止前の北海道こども施策審議会条例(以下「旧審議会条例」という。)第1条第1項の規定により置かれている北海道こども施策審議会(以下「旧審議会」という。)は、第18条第1項の規定により置かれた北海道こども施策審議会(以下「新審議会」という。)とみなす。
4 この条例の施行の際現に旧審議会条例第4条第1項の規定により旧審議会の委員又は特別委員に任命されている者は、第21条第1項の規定により新審議会の委員又は特別委員に任命された者とみなす。この場合において、委員及び特別委員の任期については、その者が旧審議会条例第4条第1項の規定により任命された日から起算する。
5 この条例の施行の際現に旧審議会条例第5条第2項の規定により互選された旧審議会の会長又は副会長である者は、第22条第2項の規定により新審議会の会長又は副会長として互選されたものとみなす。
6 この条例の施行の際現に旧審議会条例第7条第1項の規定により置かれている部会は、第24条第1項の規定により置かれた部会とみなす。
7 この条例の施行の際現に旧審議会条例第7条第3項又は第4項の規定により部会の部会長、委員又は特別委員に指名された者は、第24条第3項又は第4項の規定により部会の部会長、委員又は特別委員に指名された者とみなす。
(北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例の一部改正)
8 北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例の一部を次のように改正する。
第9条中「努める」の次に「ことにより、少子化対策を推進する」を加える。
(検討)
9 知事は、この条例の施行の日から起算して5年を経過するごとに、社会経済情勢の変化等を勘案し、この条例の施行の状況等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。