Q1 アスベストとはどういうものですか?
アスベストは、天然に産出する極めて細い繊維状の鉱物のうち、工業用原材料として使用される鉱物の総称です。国内のアスベスト使用量の約9割は建築材料として使用されましたが、自動車のブレーキ、シーリング材等の工業製品、家電製品等にも使用され、その製品の種類は3000以上あったと言われています。アスベスト製品の製造、使用は段階的に禁止されており、平成18年9月1日にはアスベストをその重量の0.1%を超えて含有するアスベスト含有製品の製造、輸入、使用等が禁止されています(化学プラントの配管接合部分に使用されるシール材など代替が困難な一部の製品を除く)。
アスベストを使用した建築材料は、アスベスト粉じんの飛散のしやすさにより、➀吹付けアスベストや吹付けロックウールなどの吹付け材、➁アスベスト断熱材、保温材及び耐火被覆材、➂スレートやパルプセメント板などのアスベスト成形板の3つに大別されます。
吹付けアスベストや吹付けロックウールなどの吹付け材は、経年変化による劣化などによりアスベストが飛散するおそれがありますが、アスベスト成形板は、アスベストとセメント等を固化して造るため、通常の状態では飛散のおそれは少ないと言われています。しかし、建築物を解体・改修する際は、アスベストが飛散しないよう適切な対応をとることが必要です。
Q2 アスベストはどんな特性をもっていますか?
アスベストが使用された理由は、次のような多くの優れた性質を一種類の物質が兼ね備えていることにあります。
・しなやかな繊維で糸に紡ぐことができ、布に織れる(紡績性)
・引っ張りに強く、切れにくい(抗張力)
・燃えにくく、高熱に耐える(耐熱性)
・熱や音を遮断する(断熱・防音性)
・酸やアルカリなどに侵されない(耐薬品性)
・電気を通しにくい(絶縁性)
・安い(経済性)
アスベストは、その繊維が極めて細く、容易に空気中に浮遊します。このため、人が呼吸により吸入しやすいという性質を持っており、吸入したアスベストは中皮腫や肺がんなどの原因になります。
Q3 アスベストにはどのような種類がありますか?
工業用に使用されてきたアスベストは6種類で、このうち国内で大量に使用されたのは、クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)の3種類です。
(写真提供 大阪府立公衆衛生研究所)
石綿の物理的・化学的性質
種類性質 | クリソタイル | アモサイト | クロシドライト | アンソフィライト | トレモライト | アクチノライト |
硬度 | 2.5-4.0 | 5.5-6.0 | 4 | 5.5-6.0 | 5.5 | 6 |
比重 | 2.55 | 3.43 | 3.37 | 2.85-3.1 | 2.9-3.2 | 3.0-3.2 |
抗張力 (kg/cm2) |
31,000 | 25,000 | 35,000 | 24,000 | <5,000 | <5,000 |
比抵抗 (MΩ・m) |
0.003-0.15 | <500 | 0.2-0.5 | 2.5-7.5 | - | - |
柔軟性 | 優 | 良 | 優 | 良-不良 | 良-不良 | 良-不良 |
耐酸性 | 劣 | 良 | 優 | 優 | 優 | 良 |
耐アルカリ性 | 優 | 優 | 優 | 優 | 優 | 優 |
脱構造水温度 (℃) |
550-700 | 600-800 | 400-600 | 600-850 | 950-1,040 | 450-1,080 |
耐熱性 | 良 450℃くらい から脆くなる |
クリソタイルよりやや良 | クリソタイルと同様 | アモサイトと同様 | クリソタイルより良 | 不良 |
注)脱構造水温度は空気中での値である。
(社団法人日本石綿協会発行「せきめん読本」より)