○環境影響評価準備書に係る知事意見 (平成25年1月22日)
1 総括的事項
(1)評価書の作成に当たっては、環境影響評価法(平成9年法律第81号)、「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令」(平成10年通商産業省令第54号。以下「発電所主務省令」という。)等の関係法令によるとともに、地域特性に十分配慮すること。
(2)環境影響評価の項目及び調査の手法の選定については、発電所主務省令第5条から第12条に基づき、環境要素及び影響要因の区分ごとにその選定した理由及び選定しなかった理由について明らかにした上で、大気質、騒音、水質、動植物等について必要な予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(3)風力発電施設、変電施設、現場事務所、仮設道路、管理用道路、土捨場などの設置に伴う土地の改変場所や面積を具体的に示した上で、工事の期間、工程、建設工事における使用資機材並びに作業車両の種類、規格、台数及び通行経路について評価書に記載すること。
(4)工事の実施に伴う影響要因については、発電所主務省令別表第5に基づき工事用資材等の搬出入、建設機械の稼働、造成等の施工による一時的な影響について調査・予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(5)風力発電施設の設置基数、設置箇所、機器並びに仮設道路、管理用道路の位置を変更する場合は、その変更の理由及び経緯を明らかにした上で、必要に応じ再評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(6)対象事業実施区域内には、既に伊達ウインドファームが稼働していることから、この風力発電所との複合的な環境影響について予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(7)既に稼働している他の風力発電所についての課題や対応策などに関する情報を可能な範囲で収集し、それらを予測・評価に活用するよう努めること。
(8)騒音、低周波音、バードストライク等の事後調査の内容については、十分ではないことから、発電所主務省令第17条に基づき再検討を行うとともに、事後調査の結果により環境影響の程度が著しいことが明らかとなった場合の対応の方針を評価書に記載すること。
(9)評価書の作成に当たっては、提出された意見を十分検討し、必要に応じ専門家等に助言を求めるとともに、各種データや評価の根拠となる数値等を具体的に記載するなど、分かりやすい内容となるよう努めること。
(10)事業計画や環境調査、工事内容等に関する情報については、地域の意向を十分踏まえて地域住民や伊達市、室蘭市に対し、積極的に情報公開や説明に努めること。
2 個別的事項
(1)大気環境
ア 風力発電機の騒音・低周波音の環境保全措置については、稼働時間や設置場所などを含め、影響が回避・低減されているかどうかについて再検討し、その結果を評価書に記載すること。
イ 騒音・低周波音の予測対象時期を風力発電機が稼働する時点としているが、影響が最大となる時期について明らかにした上で予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
ウ 低周波音については、可聴域の一部の周波数帯において現況からの増加が認められることから、低周波音に係る最新の知見を踏まえその増加分を回避・低減するために必要な環境保全措置を検討し、その結果を評価書に記載すること。
エ 風車と室蘭市立喜門岱小学校の距離は騒音・低周波音の調査地点NO.1の石川町と同程度の距離であることから、同校を調査地点に加え調査・予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(2)風車の影(シャドーフリッカー)
道路近傍に設置する風車については、風車の影が走行車両に及ぼす影響について予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(3)鳥類
ア 鳥類については、調査方法や調査時期が十分ではないことから、鳥類への影響が適切に予測・評価できるよう、専門家等の助言や市民団体の調査結果なども活用しながら必要な追加調査を行い、その結果を評価書に記載すること。
イ 風力発電施設や管理用道路などの設置による土地の改変場所や面積が記載されていないことから、これらを明らかにした上で、鳥類の生息環境への影響について予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
ウ 希少猛禽類については、「時間の経過とともに、騒音に対して慣れることが考えられることから騒音による生息環境に与える影響は小さいものと予測される」としているが、希少猛禽類のみならず鳥類全般について、最新の文献を参考として科学的に予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
エ 鳥類については、既設の風力発電機の高さなどとの相対比較により飛翔高度を推定しているほか、「予め風力発電機の存在を認識し、移動経路の変更あるいは分散を促すことは十分に可能であると予測される」としているが、飛翔高度や飛翔経路の調査方法が十分ではなく、かつ、悪天候時の渡りのルートや猛禽類の採餌行動などを考慮していないことから、最新の科学的知見を基に可能な限り客観的かつ定量的な再評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
オ 鳥類の環境保全措置については、例えば渡りの時期の稼働調整等可能な限り具体的に評価書に記載すること。併せて、衝突等による死亡・傷病個体の調査を適切に実施し、死亡・傷病個体が確認された場合には、関係機関等に連絡するなど積極的な情報提供に努めること。
(4) 動物
ア ほ乳類・両生類・爬虫類・昆虫類(以下「ほ乳類等」という。)については、8~10月に調査が実施されておらず、調査時期としては十分ではないことから、ほ乳類等への影響を適切に予測・評価できるよう適期に必要な追加調査を行い、その結果を評価書に記載すること。
イ 風力発電施設や管理用道路などの設置による土地の改変場所や面積が記載されていないことから、これらを明らかにした上で、適切な調査ルートを設定し、ほ乳類等の生息環境への影響について調査・予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(5)植物
ア 調査は5~7月、11月、12月に実施されているが、調査時期としては十分ではないことから、植物への影響を適切に予測・評価できるよう適期に必要な追加調査を行い、その結果を評価書に記載すること。
イ 土木工事の際には表土を一時的に仮置きし、工事後の施設の覆土として再利用するとしているが、侵略的外来種の生育域拡大の防止策が示されていないことから、侵略的外来種による影響について調査・予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(6)景観
景観については、地域住民の意見を十分把握し、これらを踏まえて再評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
(7)その他
ア 発電所主務省令第8条に基づき専門家等の助言内容と専門分野を評価書に記載すること。
イ 事業の実施に当たっては、関係法令を遵守することはもとより、環境影響評価の結果を踏まえて環境保全についての適切な配慮を行うこと。
|