環境影響評価方法書に係る知事意見 (平成17年10月3日)
1 総括的事項
(1)対象道路事業実施区域及びその周辺地域については、大部分が農耕地であり、馬追丘陵及びその周囲には森林の分布がみられ、また、防風保安林、河川、湧水等が存在することから、地域特性を十分に勘案し、専門家の意見を必要に応じ聴いた上で、環境要素の項目について、調査地点、調査頻度、調査時期を適切に選定し、調査、予測及び評価を行うこと。
(2)環境影響評価を行う過程において、環境影響評価の項目及び手法の選定等に係る新たな事情が生じたときは、項目及び手法を検討し、追加的に調査、予測及び評価を行う等適切に対応すること。
(3)計画路線のルート、道路の構造、工事の方法等の検討について、環境保全措置に係る複数案の比較検討を行った場合には、その評価の根拠及び検討過程を環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)に記載すること。
(4)予測の対象とする時期について、一部区間の先行的な供用開始や暫定2車線での供用開始など対象道路事業に係る工事が完了する前に供用されることが予定されている場合は、必要に応じ中間的な時期での予測を行うなど、適切な環境影響評価を行うこと。
(5)準備書の作成に当たっては、熟度が高い道路計画図等をもとに調査、予測及び評価を行うこと。
2 個別的事項
(1) 大気環境
ア 対象道路事業実施区域周辺の既存道路において、現況の大気質及び騒音が環境基準値を超過していることから、資材及び機械の運搬に用いる車両の運行について、必要な環境保全措置を検討すること。また、対象道路事業の実施により既存道路における将来交通量が現状よりも増加する場合は、周辺地域を含めて予測及び評価を行うこと。
イ 道路に面する地域における騒音については、沿道の住居等の立地状況を考慮し、面的評価を検討すること。
(2) 水環境
道路の供用後においては、道路清掃排水、融雪剤の流出など河川水質への影響のおそれがあることから、「水の濁り」「水の汚れ」について調査、予測及び評価を検討すること。
(3) 地下水
道路構造や工事方法により地下水脈の分断等の影響が想定される場合は、地下水の水位等について調査、予測及び評価を行うこと。
(4) 動物、植物、生態系
ア 動植物の生息又は生育の状況については、選定した重要な動植物を確認するため、現地調査、文献調査、聞き取り調査結果を一覧表等により整理し、資料として準備書に添付すること。
イ 対象道路事業実施区域及びその周辺地域については、ガン・カモ・ハクチョウ類を主体とする渡り鳥の移動ルート上であり、区域内の水田地帯が採餌場所として利用されている可能性があることから、工事の実施による鳥類の生息への影響について、調査、予測及び評価を行うこと。
ウ オオタカ等の重要な猛禽類の営巣や繁殖が確認された場合は、「猛禽類保護の進め方」(1996年8月、環境庁)に沿って、専門家の意見を聴いた上で調査や保護方策の検討を行うこと。
エ 河川などの水域における底生動物について、必要に応じ専門家の意見を聴いた上で調査を実施すること。
オ 水棲生物について重要な種が確認された場合は、水底等の掘削や降雨時における土工部(建設発生土の保管場所等を含む)からの濁水の流出等による影響について、必要に応じ予測及び評価を行うこと。
カ オオムラサキとエゾエノキとの特殊性など地域を特徴づける生態系が確認された場合には、専門家の意見を聴いた上で調査、予測及び評価を実施すること。
キ 照明灯の設置により、道路周辺の動植物や生活環境への影響のおそれがある場合には、必要な環境保全措置を検討すること。
(5) 廃棄物等
建設工事に伴う廃棄物や残土などについて、種類ごとに区分し、それらの発生量、事業実施区域内での再利用量、リサイクル処理量、最終処分量、処理方法などを準備書に記載すること。
環境影響評価準備書に係る知事意見(平成19年12月25日)
1 総括的事項
(1)評価書の作成にあたっての留意事項
ア 準備書においては、記載の誤りや、低騒音型機械等を用いた場合の騒音値の比較などの説明不足、また、景観に係る予測地点選定の検討内容が記載されていないなど、適切とはいえない部分がある。このため、評価書の作成に当たっては、記載内容の追加や修正を適切に行うとともに、これらについて可能な限り数的根拠や考え方を示すなど、分かりやすい評価書の作成に努めること。
イ 当該道路事業は、大部分が盛土構造であり、相当量の盛土材の運搬が予想され、また、当該地域は、ガン類やハクチョウ類の渡りのルート上にあり、春季と秋季には事業実施区域周辺にねぐらや採餌場が多数存在している。このため、評価書の作成にあたっては、「資材及び機械の運搬に用いる車両の運行」による動物(鳥類)への影響予測及び評価を実施すること。
(2)詳細設計段階における配慮事項
路線の位置等が確定していないため、予測の不確実性が残る事項があることから、詳細設計段階において、環境保全措置の検討を行い、環境への影響について、可能な限り回避し、又は低減すること。また、粉じん等について基準との整合が図られる場合においても、詳細設計段階において、環境への影響を更に回避し、又は低減するよう努めること。
(3)工事の実施中、供用開始後における配慮事項
工事の実施中及び供用開始後においては、周辺住民の生活環境に十分配慮するため、環境保全措置を的確に講ずること。また、自然環境については、現時点では予測し得ない事項も想定されることから、事後調査など状況の把握に努め、自然環境への影響が生じた場合は、適切に対応し、その結果の公表に努めること。
2 個別的事項
(1)騒音
排水性舗装の減音効果は経年的に低下することから、供用開始後は状況の把握に努め、減音効果が維持されるよう適切に対応すること。なお、現況で既に基準値を超過している国道274号沿線において騒音の増加が予測されていること、また、暫定供用段階において長沼市街地の既存道路の沿線で自動車の走行に係る騒音が基準値を超過すると予測されていることから、適切に対応すること。
(2)動物
動物の移動経路の確保については、当該道路事業により生息地の分断による影響が懸念されることから、詳細設計段階において新たな移動の痕跡などが確認された場合、可能な限り動物の移動経路を確保すること。
(3)植物
地域に生育する植物に与える影響については、詳細設計段階においては、可能な限り回避し、又は低減すること。なお、やむを得ず代償措置として植物の移植を実施する場合は、移植候補地の選定などについて専門家への意見聴取を行うとともに、事後調査を行い、移植後の活着状況等の把握に努めること。
(4)生態系
馬追丘陵の裾野に位置する生態系区分の「台地の樹林地」は、当該地にわずかに残る樹林地であり、希少種のゴマダラチョウやオオムラサキの食樹であるエゾエノキや産卵前の重要な餌資源であるミズナラ(樹液)などの樹木が生育する昆虫類にとって重要な存在である。このため、詳細設計段階において、「台地の樹林地」に与える影響を可能な限り回避し、又は低減すること。