環境影響評価方法書に係る知事意見 (平成15年10月31日)
1 総括的事項
(1) 事業実施区域については、歴史、文化、風土など地域の特性に富む観光地にあり、また、鳥獣保護区や環境緑地保護地区、多くの河川が存在することから、こうした地域特性を十分に勘案し、必要に応じ専門家の意見を聴いた上で、環境要素の項目について、調査地点、調査頻度、調査時期を適切に選定し、調査、予測及び評価を行うこと。
(2) 計画路線の具体的なルート、構造の設定等に当たっては、実行可能な範囲において、環境保全措置について複数案の比較検討を行うことにより、環境影響が回避・低減されているかどうかの検証を行うとともに、よりよい技術の導入の検討を行うこと。なお、環境保全措置の検討過程についても環境影響評価準備書に記載すること。
(3) 環境影響評価を行う過程において、環境影響評価の項目及び手法の選定等に係る新たな事情が生じたときは、必要に応じ項目及び手法を見直し、追加的に調査、予測及び評価を行う等、適切に対応すること。
2 個別的事項
(1) 大気環境
事業実施区域には、学校や福祉施設など、環境の保全についての配慮が特に必要な施設が多数存在することから、これら施設の位置やランプ等の道路構造等を勘案し、大気環境の調査地点を選定し、調査、予測及び評価を行うこと。なお、道路に面する地域における騒音の評価については、沿道の住居等の立地状況を考慮した面的な評価を行うこと。
(2) 水環境
切土工又は掘削工が予定される区域においては、水底等の掘削や降雨時における土工部(建設発生土の保管場所等を含む)からの濁水の流出による公共用水域の水の濁りへの影響のおそれがあることから、必要に応じ「水の濁り」について調査、予測及び評価を行うこと。
(3) 地下水
切土工(堀割構造物)、トンネル構造物は地下水の流れに影響を与えるおそれがあることから、必要に応じ「地下水の水位」について調査、予測及び評価を行うこと。
(4) 電波障害
橋梁や嵩上げ式構造等の周辺に住宅等の保全対象が存在する場合は、電波障害が懸念されることから、必要に応じ「電波障害」について、調査、予測及び評価を行うこと。
(5) 動物、植物、生態系
ア 事業実施区域及びその周辺地域で、重要な動物・植物が確認された場合は、専門家の意見を聴いた上で、調査、予測及び評価を行うこと。
イ 現地踏査において、オオタカ等の重要な猛禽類の営巣や繁殖が確認された場合は、「猛禽類保護の進め方」(1996年9月、環境庁)に沿って、専門家の意見を聴いた上で調査や保護策の検討を行うこと。
ウ レッドリスト絶滅危惧2類であるニホンザリガニなど河川域における底生動物について、必要に応じ専門家の意見を聴いた上で調査を実施すること。
エ 切土工又は掘削工が予定される区域においては、水底等の掘削や降雨時における土工部(建設発生土の保管場所等を含む)からの濁水の流出により、底生動物などの水生生物への影響のおそれがあることから、必要に応じ専門家の意見を聴いた上で調査、予測及び評価を行うこと。
オ 生態系に与える影響の調査、予測に際しては、専門家の意見を聴いた上で抽出した注目種・群集の生息・生育環境、生活史を考慮した現地調査を行うとともに、可能な限り個体数・現存量などの把握を踏まえた定量的な予測手法を用いること。
カ 地域を特徴づける生態系において、特殊性の視点からの注目種・群集が選定されていないが、さらに現地踏査の結果や専門家の意見を聴いた上で、必要に応じ選定すること。
キ 凍結防止剤、融雪剤の使用により動植物への影響を及ぼすおそれがある場合には、特に河川域における水生生物の分布を考慮して調査、予測及び評価を行うこと。
(6) 廃棄物等
事業実施により発生する建設発生土及び廃棄物について、事業実施区域内で再生利用されるものと区域外に搬出されるものに区分し、可能な限り定量的に発生、処理状況について予測、評価を行うこと。
(7) 光害
光害については、照明灯の設置により、道路周辺の動植物や生活環境への影響が考えられることから、必要な環境保全措置を具体的に準備書に記載すること。
環境影響評価準備書に係る知事意見(平成18年3月30日)
1 全体的事項
(1) 準備書においては、騒音の予測式のパラメータの設定条件や、動物に係る保全対象種の選定区分などについて説明が不足している部分があり、また、生態系等に係る予測結果を断定的に結論づけることや、食物連鎖模式図で示された捕食関係などに適切とはいえない記述がある。評価書の作成に当たっては、これらについて可能な限り数的根拠や考え方を示すよう記載内容の追加や修正を適切に行うこと。
(2) 路線の位置や工作物の設置位置等が確定していないなど、予測の不確実性が残る事項が多いことから、詳細設計段階において、環境保全措置の検討を行い、適切に対応すること。
(3) 工事中及び供用後においては、周辺住民の生活環境に十分配慮し、環境保全措置を的確に講じ、環境保全に努めること。
(4) 詳細設計段階での調査結果等、環境保全措置の実施内容及び事後調査結果などについて情報の積極的な公表に努めること。
2 個別的事項
(1) 騒音
自動車の走行に係る騒音の予測結果では、評価基準を超過し遮音壁の設置による環境保全措置が必要であるとされていることから、詳細設計段階で、専門家への意見聴取などにより、地形の複雑さや対象家屋の状況等を考慮した予測を行い、遮音壁の設置箇所や高さなどの仕様を決定し適切な環境保全措置を講ずることまた、供用後に騒音の状況の把握に努め、必要に応じ環境保全措置を講ずること。
(2) 振動
振動に関しては、供用に伴う状況の変化によって、予測結果と実際に発生する振動の大きさが異なる可能性があるため、環境影響のおそれがある場合には必要な調査の実施や環境保全措置の検討を行い、適切に対応すること。
(3) 水質
水質については評価項目に選定されていないが、凍結防止剤、融雪剤の使用による河川等の水質や水生生物などへの影響が懸念されることから、詳細設計段階で、影響低減に関し専門家への意見聴取などを行い、適切に対応すること。
(4) 地形・地質
地形・地質については評価項目に選定されていないが、切土工(掘割構造物)や、トンネル構造物による地下水位の低下及び松倉川に架かる橋梁における橋台・橋脚の設置位置によっては伏流浸透水の分断等が懸念されることから、詳細設計段階で、専門家への意見聴取や環境保全措置の検討を行い、適切に対応すること。
(5) 動物・植物・生態系
地域に生息・生育する動植物又は生態系に与える影響について、詳細設計段階で、可能な限り回避・低減に努めるとともに、植物についてやむを得ず代償措置を実施する場合、十分な検討を行い、適切に対応すること。なお、生息・生育環境の一部が消失又は縮小し、その影響が懸念される種について、事後調査などを実施し、影響の把握に努めること。 松倉川に架かる橋梁における橋台・橋脚の設置位置によっては、動物・植物・生態系への影響が懸念されることから、詳細設計段階で、必要に応じて専門家への意見聴取や環境保全措置の検討を行い、適切に対応すること。
(6) 動物
動物の保全対象種の移動経路の確保又は移動空間の確保に関しては、詳細設計段階で、新たな移動の痕跡などが確認された場合、可能な限り動物の移動経路の確保に努めること。
(7) 植物
植物の保全対象種の移植に関しては、詳細設計段階で、保全対象種の選定や移植候補地の選定などについて、専門家への意見聴取や環境保全措置の検討を行い、植物の生育環境の確保に努めること。また、事後調査を行い、移植後の活着状況等の把握に努めること。