稚内市・豊富町における風力発電事業 計画段階環境配慮書に係る知事意見

〇 計画段階環境配慮書に係る知事意見 (平成27年8月25日) 

1 総括的事項

(1)事業実施想定区域のA区域は、周氷河地形として重要な宗谷丘陵の中にあり、区域内にあるササ草原等は特定植物群落に選定されているほか、自然林や自然草原をはじめとする自然度の高い植生や保安林などの重要な自然環境のまとまりの場が存在する。区域の周辺では、北側に位置する宗谷岬は、オオワシやオジロワシなどの希少猛禽類をはじめとする多様な鳥類の渡りのルートや中継地としても重要な地域となっており、北西側には富磯市街地があり、多数の住居や学校が存在している。
 B区域は、利尻礼文サロベツ国立公園に近接し、区域の大部分が特定植物群落に選定されたササ草原であり、自然林といった自然度の高い植生などの重要な自然環境のまとまりの場が存在する。区域の周辺では、希少猛禽類の営巣や飛翔が確認されており、北側及び南側には市街地があり、多数の住居や学校等が存在している。
 C区域は、自然林といった自然度の高い植生などの重要な自然環境のまとまりの場が存在し、オオヒシクイの渡りのルート上にあるとともに、オオタカ、オジロワシなどの生息が確認されており、周辺には住居が存在している。
 D区域は、自然林など自然度の高い植生の区域などの重要な自然環境のまとまりの場が存在し、区域の周辺では、オジロワシの営巣が確認されているほか、希少鳥類であるオオヒシクイ、マガンなどの渡りの中継地として重要なサロベツ原野に近接している。特に、サロベツ原野は、オオヒシクイに関して、国内に飛来する殆どの個体がサハリンを経由して飛来するため、重要野鳥生息地(IBA)に選定されており、近年、国内希少野生動植物種であり国の特別天然記念物であるタンチョウの繁殖が継続して確認されている。また、区域の周辺には多数の住居や学校等が存在し、特に南側の飛び地は豊富町の市街地に近接している。
 
(2)本配慮書では、4つの事業実施想定区域を設定し、その1区域若しくは複数の区域において最大出力7万kWの風力発電所を設置することとしているが、今後の事業実施想定区域からの絞り込みによる対象事業実施区域の設定、事業の規模、風力発電設備の配置及び構造・機種の検討に当たっては、区域の周辺に存在する住居等への騒音及び超低周波音や風車の影による重大な環境影響を及ぼさないよう十分な離隔距離を確保すること。また、上記の重要な自然環境のまとまりの場を対象事業実施区域から原則除外するとともに、希少鳥類の渡りや移動及び営巣への重大な影響を及ぼさないようにすること。特に、過去のバードストライクの発生情報からバードストライクが発生しやすいと思われる地形を有する場所においては、風力発電設備の設置を極力避けること。
 さらに、利尻礼文サロベツ国立公園である利尻島、抜海海岸、サロベツ原野などの景観資源の眺望に重大な影響を及ぼさないようにすること。
 
(3)今後の検討に当たっては、2の個別的事項の内容を十分に踏まえ、専門家等からの助言を得ながら科学的・客観的な方法により調査及び予測を行い、各環境要素に係る重大な環境影響の程度を評価し、その結果を本事業の位置及び規模、風力発電設備の配置及び構造・機種の検討に反映するとともに、その経緯等についても、方法書に記載すること。
 なお、検討の結果、重大な環境影響の回避又は低減ができることを裏付ける科学的根拠を示すことができない場合は、これらの区域を対象事業実施区域としないことや事業規模の縮小など、事業計画の見直しを行うこと。
 
(4)事業実施想定区域からの絞り込みの結果、既設や計画中の風力発電所との累積的な影響が生じるおそれがある場合は、それらの区域等に関連する環境要素に係る累積的な影響についても調査、予測及び評価すること。
 
 
2 個別的事項
 
(1)A区域

 騒音及び超低周波音、風車の影
 本区域の北西側には住居や学校等が存在しており、これらに対する騒音及び超低周波音や風車の影による健康影響を含む重大な環境影響が生じるおそれがあるため、1/3オクターブバンド音圧レベル(200Hz以下)や日影図の情報等に基づいた適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 水環境
 本区域内には、さけ・ます資源保護対策の保護水面である増幌川の支流があり、土地改変による濁水や土砂の流入などによる影響を及ぼすおそれがあるため、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 動物
 本区域及びその周辺では、オオワシ、ミサゴ、ハイタカなどの希少猛禽類の飛翔が確認されているほか、区域の南側に位置するモイマ山は、オオワシなどの渡りの中継地となっており、西側では、専門家等によりオジロワシの営巣が確認されている。また、初冬期の増幌川では遡上するサケ等を餌とするため飛来する海ワシ類が多数確認されているほか、区域の北側にある既設の風力発電所では、オジロワシのバードストライクがこれまで複数回発生していることから、希少猛禽類の生息環境に対して著しい影響を及ぼすおそれが極めて高い。
 このため、専門家等からの助言を得ながら、渡りを含む移動経路や生息状況等に関する詳細な調査及び予測を行い、バードストライクや営巣の阻害などの重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 植物、生態系
 本区域内には、宗谷丘陵ササ草原及び東浦(宗谷丘陵)自然林といった特定植物群落、トドマツ-ミズナラ群落、エゾイタヤ-ミズナラ群落などの自然林を含む自然度の高い植生や保安林などの重要な自然環境のまとまりの場が存在しており、風力発電設備や搬入路の設置に伴う土地改変箇所の検討に当たっては、それらの範囲を避けるとともに、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
 また、生態系に関する上位性注目種や典型性注目種等については、地域における生息環境に即した適切な種を選定するとともに、事業の実施による影響について、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 景観
 本区域を含む宗谷丘陵は、周氷河地形として北海道遺産に選定されており、地域の重要な景観資源となっていることから、宗谷丘陵を景観資源として選定し、適切な方法で調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 人と自然との触れ合いの活動の場
  本区域の北側には、宗谷丘陵のゆるやかな起伏を楽しむためのフットパスコースが整備されており、工事車両の通行や施設の稼働など事業の実施に伴い利用性、快適性などに影響が生じることが想定されることから、これらについても適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
 
(2)B区域

 騒音及び超低周波音、風車の影
 本区域の周辺には多数の住居や学校等が存在し、これらに対する騒音及び超低周波音や風車の影による健康影響を含む重大な環境影響が生じるおそれがあるため、1/3オクターブバンド音圧レベル(200Hz以下)や日影図の情報等に基づいた適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 水環境
 本区域内には、勇知川等の支流があり、土地改変による濁水や土砂の流入などによる影響を及ぼすおそれがあるため、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 動物
 本区域及びその周辺では、専門家等によりオジロワシの営巣が確認されているほか、冬季間、砂丘林をねぐらにして海岸線沿いを主な餌場としている海ワシ類の飛翔が確認されているとともに、本区域の南側に位置する兜沼周辺は、オオヒシクイやマガンの渡りの重要な中継地となっていることから、希少鳥類の生息環境に対して著しい影響を及ぼすおそれが極めて高い。
 このため、専門家等からの助言を得ながら、渡りを含む移動経路や生息状況等に関する詳細な調査及び予測を行い、バードストライクや営巣の阻害などの重大な環境影響の有無を評価すること。
 また、タンチョウについては、環境省の「タンチョウ生息地分散行動計画」(以下「分散行動計画」という。)の分散適地として選定されている「兜沼周辺湿地を含む上サロベツ原野」が、本区域の南側に隣接しており、同地域は今後のタンチョウの分散にとって重要な地域であるとともに、近年、同地で観察されているタンチョウは道北地域における個体群維持のために非常に重要な意味を持つものである。このため、最新の生息情報を入手するとともに、専門家の意見に従って必要な期間及び方法で十分な調査を行い、生息等への影響についても適切な方法により、調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 植物、生態系
 本区域内には特定植物群落である稚内~抜海丘陵ササ草原及びエゾイタヤ-ミズナラ群落などの自然林を含む自然度の高い植生や保安林などの重要な自然環境のまとまりの場が存在しており、風力発電設備や搬入路の設置に伴う土地改変箇所の検討に当たっては、それらの範囲を避けるとともに、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
 また、生態系に関する上位性注目種や典型性注目種等については、地域における生息環境に即した適切な種を選定するとともに、事業の実施による影響について、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 景観
 稚内公園、道立宗谷ふれあい公園、ミルクロード、夕陽が丘パーキング、宮の台展望台、道道106号稚内天塩線などの眺望点からの利尻礼文サロベツ国立公園である利尻島、抜海海岸、サロベツ原野などの眺望景観に重大な支障を及ぼすおそれがあることから、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な影響の有無を評価すること。

 
 人と自然との触れ合いの活動の場
 本区域の周辺には、「ゆうち自然学校」や「稚内市上勇知スキー場」が存在しており、工事車両の通行や施設の稼働など事業の実施に伴い、それらの施設等の利用性、快適性などに影響が生じることが想定されることから、これらについても適切な方法により調査及び予測を行い、重大な影響の有無を評価すること。
 
(3)C区域

 騒音及び超低周波音、風車の影
 本区域の周辺には住居が存在し、これらに対する騒音及び超低周波音や風車の影による健康影響を含む重大な環境影響が生じるおそれがあるため、1/3オクターブバンド音圧レベル(200Hz以下)や日影図の情報等に基づいた適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 水環境
 本区域内には、絶滅危惧種のイトウの生息が確認されている天塩川水系等の支流上流部があることから、土地改変による濁水や土砂の流入などによるイトウの生息に対する影響を及ぼすおそれがあるため、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 動物
 本区域はオオヒシクイの渡りのルート上にあるほか、本区域の周辺では、専門家等によりオジロワシの営巣が確認されていることから、希少猛禽類の生息環境に対して著しい影響を及ぼすおそれが極めて高い。
 このため、専門家等からの助言を得ながら、渡りを含む移動経路や生息状況等に関する詳細な調査及び予測を行い、バードストライクや営巣の阻害などの重大な環境影響の有無を評価すること。
 また、タンチョウについては、分散行動計画における分散適地として選定されている「兜沼周辺湿地を含む上サロベツ原野」が、本区域の西側に近接していることから、最新の生息情報を入手するとともに、専門家の意見に従って必要な期間及び方法で十分な調査を行い、生息等への影響についても適切な方法により、調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 植物、生態系
 本区域内には、トドマツ-ミズナラ群落やエゾイタヤ-ミズナラ群落などの自然林を含む自然度の高い植生や保安林などの重要な自然環境のまとまりの場が存在しており、風力発電設備や搬入路の設置に伴う土地改変箇所の検討に当たっては、それらの範囲を避けるとともに、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
 また、生態系に関する上位性注目種や典型性注目種等については、地域における生息環境に即した適切な種を選定し、事業の実施による影響について、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 景観
 稚内公園、道立宗谷ふれあい公園、ミルクロードなどの眺望点からのサロベツ原野などの眺望景観に重大な支障を及ぼすおそれがあることから、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な影響の有無を評価すること。

 
 人と自然との触れ合いの活動の場
 本区域の周辺には兜沼公園キャンプ場があり、地元の人々はもとより、観光客も多く訪れるアウトドアスポットとなっており、工事車両の通行や施設の稼働など事業の実施に伴い利用性、快適性などに影響が生じることが想定されることから、これらについても適切な方法により調査及び予測を行い、重大な影響の有無を評価すること。
 
(4)D区域

 騒音及び超低周波音、風車の影
 本区域の周辺には多数の住居や学校等が存在し、特に区域の南側の飛び地は豊富町の市街地に近接しており、これらに対する騒音及び超低周波音や風車の影による健康影響を含む重大な環境影響が生じるおそれがあるため、1/3オクターブバンド音圧レベル(200Hz以下)や日影図の情報等に基づいた適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 水環境
 本区域内には、絶滅危惧種のイトウの生息が確認されている天塩川水系等の支流上流部があることから、土地改変による濁水や土砂の流入などによるイトウの生息に対する影響を及ぼすおそれがあるため、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 動物
 本区域はオオヒシクイの渡りのルート上にあるほか、本区域の周辺において、専門家等によりオジロワシの営巣が確認されていることから、希少猛禽類の生息環境に対して著しい影響を及ぼすおそれが極めて高い。
 このため、専門家等からの助言を得ながら、渡りを含む移動経路や生息状況等に関する詳細な調査及び予測を行い、バードストライクや営巣の阻害などの重大な環境影響の有無を評価すること。
 また、タンチョウについては、サロベツ原野での繁殖が確認されているほか、分散行動計画における分散適地として選定されている「兜沼周辺湿地を含む上サロベツ原野」が本区域に西側に近接していることから、最新の生息情報を入手するとともに、専門家の意見に従って必要な期間及び方法で十分な調査を行い、生息等への影響についても適切な方法により、調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 植物、生態系
 本区域内には、トドマツ-ミズナラ群落やエゾイタヤ-ミズナラ群落などの自然林を含む自然度の高い植生や保安林などの重要な自然環境のまとまりの場が存在しており、風力発電設備や搬入路の設置に伴う土地改変箇所の検討に当たっては、それらの範囲を避けるとともに、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
 また、生態系に関する上位性注目種や典型性注目種等については、地域における生息環境に即した適切な種を選定し、事業の実施による影響について、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。

 
 景観
 稚内公園、道立宗谷ふれあい公園、宮の台展望台、サロベツ湿原センター、道道106号稚内天塩線などの眺望点からのサロベツ原野などの眺望景観に重大な支障を及ぼすおそれがあることから、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な影響の有無を評価すること。
 また、兜沼公園キャンプ場のサイクリングロードからのサロベツ原野などの眺望景観に重大な支障を及ぼすおそれがあることから、同サイクリングロードも主要な眺望点とすること。

 
 人と自然との触れ合いの活動の場
 本区域の周辺には、地元の人々はもとより、観光客も多く訪れる兜沼公園キャンプ場や豊富町自然公園があり、工事車両の通行や施設の稼働など事業の実施に伴い、それらの施設等の利用性、快適性などに影響が生じることが想定されることから、これらについても適切な方法により調査及び予測を行い、重大な影響の有無を評価すること。

 

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