エゾシカは、明治の初めに乱獲や大雪などの影響を受け、一時は絶滅寸前になりました。
その後の保護政策等で数が増え、ここ30年ほどでエゾシカの数が急増。
推定生息数は平成22年度に65万頭にまで増加。
現在の推定生息数は減少傾向にあるものの、未だ高い水準を保っています。
エゾシカが急増した要因はいくつかあります。
原生林だった場所が次々に農地に変わり、新しいえさ場になったこと、
天敵だったエゾオオカミが絶滅するなどで繁殖しやすくなったこと、
また、ハンターの数が年々減少していることも理由のひとつです。
その中で心配されているのは、自然環境への影響です。
エゾシカが樹木の皮や希少植物を食べるなどして森を荒らし、バランスを保ってきた自然の姿を変えてしまいます。
また、農作物に対する被害や自動車との衝突事故など、私たちの暮らしにも影響が及んでいます。
サケと並ぶ貴重な食料としてアイヌの人々に親しまれてきたエゾシカ。
明治初期の北海道では、開拓使がシカ肉の缶詰工場をつくり、海外にも輸出していました。
欧米では、狩猟で捕獲された野生動物の肉は「ジビエ」と呼ばれて珍重され、特にシカ肉は高級食材として扱われています。
エゾシカ肉は、昔から食材としての価値が認められていました。
それは北海道にとって、"森の幸"ともいえる大切な食材であり、自然の資源です。
エゾシカによる問題を解決するには、増えたエゾシカを捕獲し、数を適正に管理することが必要です。
捕獲したエゾシカを大切な命として、私たちがエゾシカ肉をおいしくいただくこと。
それが北海道の豊かな自然環境や私たちの暮らしを守ることにつながります。