● 見直しの背景
令和4年(2022年)12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議では、愛知目標に代わる、令和12年(2030年)までの生物多様性に関する新たな世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。また、令和5年(2023年)3月には、同枠組を踏まえ「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定されました。
【図 生物多様性国家戦略2023-2030の構造】
(出典:環境省資料「次期生物多様性国家戦略(案)地方説明会説明資料」)
こうした国内外の生物多様性に関する状況の変化や国の新たな生物多様性国家戦略の策定を踏まえ、「北海道生物多様性保全計画」を見直し、本計画を策定しました。
北海道生物多様性保全計画(第2次計画) 概要版 | PDF(615KB) |
北海道生物多様性保全計画(第2次計画) 本編 | PDF(2.61MB) |
北海道生物多様性保全計画(第2次計画) 行動計画編 | PDF(1.04MB) |
北海道生物多様性保全計画(第2次計画) 基礎資料編 | PDF(2.65MB) |
● 計画の位置づけ
本計画は、北海道生物の多様性の保全等に関する条例第9条第1項に基づく「生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画」であり、また、生物多様性基本法第13条第1項に基づく「生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画」(以下、「生物多様性地域戦略」という。)として策定しています。
また、道では、北海道行政基本条例第7条第1項に基づく、道の政策の基本的な方向を総合的に示す計画である「北海道総合計画」を策定するとともに、具体的な施策・事業を推進するための特定分野別計画として北海道環境基本計画などを定めています。
本計画は、「北海道環境基本計画」における個別計画の一つに位置付けられていることから、こうした計画と相互に連携を図りながら施策を進めていきます。
【図 本計画と関連する他の計画との関係】
● 計画期間と対象区域
【計画期間】
本計画では、令和32年(2050年)までの長期的な視点に立った上で、計画の目標年を令和12年(2030年)に設定して取組を進めていくことから、計画の期間は令和12年度(2030年度)までとします。
【対象区域】
本計画の対象区域は、本道全域とします。
● 2050年までの長期目標
本計画においては、令和32年(2050年)までに、誰もが生物多様性の保全や持続可能な利用に関心を持ち、生物多様性への負荷を低減した持続可能なライフスタイルを実践しているとともに、多様な主体が気候変動対策と調和した生物多様性の保全や回復に関する活動の実施又は活動に参加することにより、「道民の生活の向上と生物多様性の保全の双方が両立している「自然と共生する社会」」を実現していくことを目指します。
● 2030年までの中期目標
本計画における令和12年(2030年)までに達成すべき中期目標を、「生物多様性国家戦略2023-2030が目指すネイチャーポジティブの実現への貢献を視野に、自然とのつながりの重要性を実感し、生物多様性の保全と持続可能な利用を進めることにより、生物多様性の損失の低減と回復の増進を図る」とします。
● 各基本方針の概要
目標の達成に向けて、本計画では本道の社会環境及び自然環境の状況を踏まえた4つの基本方針を定め、基本方針ごとに令和12年(2030年)までの中期目標を達成するため、実現している必要がある「目指すべき状態」や、取組を加速させていく必要がある「取るべき行動」を設定します。
【図 本計画における目標、基本方針等の関係】
■ 基本方針1
【図 生物多様性の4つの危機】
(出典:環境省資料「次期生物多様性国家戦略(案)地方説明会説明資料」)
【目指すべき状態】
○ 生態系の規模が全体として増加し、それらの質が向上している
○ 生物多様性への負荷が低減されている
【取るべき行動】
○ 希少種の保全、外来種の防除、劣化した生態系の再生等、生物多様性の回復に向けた取組を実施する
○ 土地利用の変化による生物多様性への影響を回避・低減する
○ 事業所・家庭等から発生する汚染や廃棄物による、生物多様性への負荷を軽減する
○ 野生鳥獣とのあつれきの軽減に向けた取組を実施する
○ 生物多様性の保全・再生に資する、農林水産業者等の環境負荷低減事業活動を推進する
■ 基本方針2
【図 道内の陸域に係る保護地域の設定状況】
(GISデータを基に作成)
【目指すべき状態】
○ 道外や国外も含め、様々な地域との間の生物多様性のつながりが形成されている
○ 生物多様性保全に貢献するエリアが十分に確保され、将来にわたる保全管理体制が構築されている
【取るべき行動】
○ 渡り鳥等の広域的に移動する動物の渡来地等の保全を通じ、道外・国外との生態系のつながりを強化する
○ アンブレラ種 の生息環境の改善を図るとともに、流域や山系等を基盤としてつながる複数の生態系の包括的な機能向上を図る
○ 法令に基づき指定される保護地域を適正管理するとともに、地域の状況に応じ区域の見直しを実施する
○ 国が認定する自然共生サイトへの登録と、その持続的な管理を促進する
○ 保護地域や自然共生サイト以外の地域も含め、生物多様性の状況の把握や保全を、地域において計画的に進める取組を促進する
■ 基本方針3
【図 SDGsウェディングケーキ図】
(出典:農林水産省HP「SDGs(持続可能な開発目標)×多面的機能支払交付金」 )
【目指すべき状態】
○ 本道の抱える様々な課題が、生物多様性の保全や利用を通じて統合的に解決されている
○ 自然を活かした持続可能な地域づくりが行われている
【取るべき行動】
○ 生物多様性保全と気候変動緩和策・適応策との便益の相反の最小化及び相乗効果の最大化を促進する
○ 自然資源を持続可能な方法で利用する、北海道らしい循環型社会を形成する
○ 地域の自然資本を持続的かつ積極的に活用した地域づくりを推進する
○ 縄文文化やアイヌ文化など地域の自然を背景とした文化の保存・継承や振興を図る
■ 基本方針4
【図 環境省「環境ラベル等データベース」に掲載されている環境ラベル等の一例】
(出典:環境省HP「環境ラベル等データベース」 )
【目指すべき状態】
○ 日常生活と自然のつながりが強化されている
○ 自然との共生に向け道内社会の意識と行動が変容している
【取るべき行動】
○ 自然とのふれあいの場や自然のしくみを学ぶ機会の増大を図る
○ 経済活動における生物多様性への配慮を促進する
○ 生物多様性への負荷の少ない消費・生活活動を推進する
○ 動物との適切な付き合い方を通じ、生命尊重の意識醸成を図る
○ 環境教育などを通じ、生物多様性の重要性や、人と自然の適切な関係構築に係る理解の増進を図る
● 横断的・基盤的な取組の概要
○ 生物多様性に関する調査研究や情報集積を行い、それらの情報を効果的に発信する
○ 世界目標や国家戦略の達成への貢献を視野に、道を含む国内外の様々な主体間の連携を促進する
○ 地域で活躍する人材の育成や、マッチング等を通じた効果的な人材の活用を図る
● 各主体の役割
■ 道民
自然とのふれあいを通じて北海道の生物多様性がかけがえのないものであることを理解し、便利さを追求した生活様式から生物多様性の保全を意識した生活へと切り替えていく必要があります。
また、消費者として商品を選択、購入の際や、所有する土地の利用や管理、ペットの飼育、庭造りなど、様々な場面において、生物多様性の保全に配慮した生活を送る姿が期待されます。さらに、生物多様性を保全するための様々な活動や自然環境調査への積極的な参加・協力が期待されます。
■ 関係団体
業界団体や職能団体、また、NPOやNGOは、生物多様性に関する政策形成や立案に当たり、様々な知見を提供いただいており、その実施に当たっても強力な推進力となっています。
今後も、こうした関係団体が、生物多様性の保全に向けて、様々な活動を主催し、あるいは学校や企業における環境教育に対する支援を行うなど、地域における生物多様性保全の牽引力となるとともに、道の生物多様性保全の取組への積極的な協力が期待されます。
■ 事業者
一部の民間事業者においては、これまでも事業活動が環境に及ぼす影響の調査を行うなど、環境に負荷をかけない経済活動に取り組んできたところです。また、保有している土地において生物多様性の保全に配慮した管理を行っている事業者もあります。今後は、国内外の経済界における生物多様性への配慮に関する動向を踏まえ、多くの事業者が、このような取組を事業活動の一環として一層進めることが求められます。
また、事業者の社会貢献活動として、地域における生物多様性保全に関する活動への積極的な支援のほか、国や道、市町村の生物多様性保全施策への積極的な協力も期待されます。
■ 市町村
市町村においては、これまでも、すぐれた自然地域の保全や動植物の調査、NPO・NGOに対する支援など、独自の取組を進めてきました。今後も、本計画の趣旨を理解し、生物多様性地域戦略を策定するなど、生物多様性保全の考え方を施策に反映させ、地域固有の動植物や景観の保全に努めることが求められます。また、NPO・NGOとも連携しながら、自然体験や環境学習の機会づくりを行うなど、地域住民に対して生物多様性保全の必要性の理解を促す取組が求められます。
■ 道
道は、国、市町村、その他関係団体との連携を図りながら、本計画に沿った施策を推進します。
また、広域的な取組を必要とする課題などに対応するため、国や他県などの関係機関との連携を進めます。
これらにより、生物多様性国家戦略の推進に貢献するとともに、その内容を道内外に発信し、生物多様性の保全と持続可能な利用の重要性や、本道の優れた自然環境の魅力を周知することにより、本道の社会経済の活性化を図ります。
● 連携体制の構築
■国との連携
国際協力で保護する必要がある生物の生息環境の保全や、日本と関係国との協力の枠組みを活用した情報交換などについて国と調整するほか、自然公園、森林などの維持管理や施設整備など様々な施策に連携して取り組みます。
■ 道庁内の連携
本庁においては、庁内各部で組織する北海道環境政策推進会議を核に、生物多様性に関する施策の連携や情報共有などを行います。各振興局においても、各種協議会などを通じ、部局間の連携を図っていきます。
■ 市町村との連携
生物多様性地域戦略の策定など、市町村が生物多様性に関する施策を検討するにあたり、必要な助言等を行っていくほか、各地域における圏域協議会などを通じ、情報共有や意見交換、共同事業の実施などを行い、連携を図っていきます。
■ 関係団体や事業者、道民との連携
環境道民会議などの活用により、生物多様性の保全について、関係団体、事業者、道民と行政との間の連携を図るとともに、国の関係機関と連携して、既存の各会議などを活用しながら本計画を推進します。
● 計画の点検評価及び見直し
本計画の目標年度である令和12年度(2030年度)には、本計画の最終的な点検評価を実施し、その結果や国の生物多様性国家戦略に関する動向を踏まえ、計画の見直し等の対応を行うこととします。
なお、本計画を実効性のあるものとして推進していくため、計画期間内においても、国の法制度や本道の自然環境等に変化のあった場合など、必要に応じて計画の見直しを行うこととします。