幌延町における深地層研究所(仮称)計画に対する基本的な考え方
平成12年6月 北 海 道 深地層研究所(仮称)計画については、平成10年2月に科学技術庁及び12月に核燃料サイクル開発機構から、岐阜県において結晶質岩での試験研究が行われていることに併せ幌延町における堆積岩での試験研究を行いたい旨の申し入れがあった。道としては、この計画に関して道民合意を得ながら取り組むとしている知事公約や、「道内に放射性廃棄物を受け入れない。放射性廃棄物の中間貯蔵施設や処分場を受け入れない。」との基本姿勢に立って、検討することとした。 平成11年1月に庁内に設置した深地層研究所計画検討委員会では、国等の説明や市民団体等の意見を伺い、幌延町における深地層研究所(仮称)計画に対する考え方を平成12年2月にまとめた。さらに、有識者懇談会を開催し、専門的な立場から意見を頂いた。 平成12年5月に、幌延町は深地層の研究を円滑に推進するために、研究期間中及び終了後において、町内に放射性廃棄物の持ち込みは認めないことなどを盛り込んだ条例を定めた。 また、国においては、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」を制定し、その中で通商産業大臣は最終処分計画における概要調査地区等の所在地を定めようとするときは、当該概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長から聴取した意見を十分に尊重してしなければならないとしている。 これらを勘案のうえ、道としての幌延町における深地層研究所(仮称)計画に対する基本的な考え方を以下のとおり取りまとめた。今後、この基本的な考え方について地元及び道民などから意見を聴取し、道議会議論も踏まえ、国等からの申し入れに対して、総合的に判断する。 1 幌延町における深地層研究所(仮称)計画に関する認識等について (1)道の認識について ○ 我が国では、原子力発電所の運転によって発生する使用済み燃料を再処理し、その際に生じる廃棄物(高レベル放射性廃棄物)を「ガラス固化体」にして処分することを基本方針としている。 ○ 高レベル放射性廃棄物の処分方法等については、地層処分及び地上や浅地層における長期貯蔵などがあるが、地層処分は我が国の基本方針となっており、国際的にも好ましい方策とされている。 ○ 地層処分のための深地層研究は、高レベル放射性廃棄物を長期間にわたり安全に処分するための研究のひとつとして重要であり、世界各国で取り組まれている。 ○ 我が国においても原子力発電所が稼働している現状では、発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物を長期間にわたり安全に処分するための技術の確立が求められており、深地層の研究が必要である。 (2)国やサイクル機構の見解等について ○ 平成6年6月に策定された国の「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」では「研究所の計画と処分場の計画を明確に区別する」とされている。 ○ サイクル機構は、研究実施区域に、研究期間中はもとより終了後においても、放射性廃棄物を持ち込まないし、使用することはない。また当該区域を将来とも放射性廃棄物の処分場にすることはないことを明らかにしている。さらに、放射性廃棄物の中間貯蔵施設については、幌延町への立地は将来ともないとしている。 ○ 国においては、北海道知事をはじめとする地元が中間貯蔵施設及び処分場を受け入れない意思を表明されているもとでは、北海道内が高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設及び処分場の立地場所になることはないことを明らかにしている。 ○ 国においては、幌延町が処分場になるのではないかとの照会に対し、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に定めたプロセスを踏んで、国としての判断を行うことになるとしている。 (3)道の基本姿勢を担保するための措置について ○ 国及びサイクル機構は、深地層の研究実施区域に放射性廃棄物を持ち込まないことなどを明言しているが、道民の間には、なお、なし崩し的に処分場になるのではないかなどの不安や懸念があることや、持ち込まないとしている地域が研究実施区域に限られていることから、深地層研究所(仮称)計画を認める場合は、放射性廃棄物を持ち込ませないための担保措置方策等が必要である。 2 幌延町における深地層研究所(仮称)計画に関する対応について 深地層研究所(仮称)計画を認める場合の担保措置としては、当事者間の契約行為である協定が現実的であり有効な方策であるので、次のとおり締結する。 ○ 協定当事者はサイクル機構、地元及び道とし、科学技術庁は立会人とする。 なお、科学技術庁の参画のあり方や地元の範囲については今後協議を行う。 ○ 協定の主な内容は次のとおりとする。 (主な協定内容) ・ 研究実施区域に放射性廃棄物を持ち込まないこと及び同区域で使用しないこと ・ 研究施設を最終処分の実施主体へ譲渡、貸与しないこと ・ 研究施設は、研究終了後閉鎖するものとし、地下施設を埋め戻すこと ・ 放射性廃棄物の中間貯蔵施設を設置しないこと ・ 計画実施段階ごとの具体的内容について十分説明をしていくこと ・ 計画の内容を変更する場合は、事前に協議すること ・ 研究所を国内外に開かれた学際的な研究の場とすること ・ 必要に応じ研究施設への立入調査ができること ・ 情報を公開すること ・ 道及び地元自治体は、事業主体が協定内容に違背したときは、事業主体に対し違背の程度に応じて研究停止などの必要な措置をとることとし、事業主体はこれに従うこと 3 協定の対象外地域に対する措置について 協定の対象外となる地域に関しては、道はこれまでも道内に放射性廃棄物を持ち込ませる意思がないことについて、国に示すとともに、道議会でも明言しているが、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律による概要調査地区選定段階までに、さらにその意思を内外に明らかにするための方策(条例、宣言、声明など)について、取り組んでいくことが必要であると考える。 ・ 深地層研究所(仮称)の概要 (本資料は図等が掲載されているため割愛させていただきます。) ・ 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の概要(平成12年5月31日成立) ・ 「深地層の研究の推進に関する条例」(幌延町・平成12年5月11日公布) 本案は、発電に関する原子力の適正な利用に資するため、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理後に生じる特定放射性廃棄物の最終処分について、計画的かつ確実に実施させるために必要な措置等を講じることにより、発電に関する原子力に係る環境の整備を図ろうとするものであり、その主な内容は次のとおりである。 1 基本方針等 ア 通商産業大臣は、特定放射性廃棄物の最終処分を計画的かつ確実に実施させるため、最終処分に関する基本方針及び5年ごとに10年を一期とする最終処分計画を、あらかじめ原子力委員会、原子力安全委員会の意見を聴いた上で、閣議の決定等を経て定め、これを公表しなければならない。 イ 通商産業大臣は、最終処分計画における概要調査地区等の所在地を定めようとするときは、当該概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長から聴取した意見を十分に尊重してしなければならない。 2 原子力発電環境整備機構 ア 原子力発電環境整備機構(以下「機構」という。)は、通商産業大臣の認可を受けて設立され、特定放射性廃棄物の最終処分の実施等の業務を行う。 イ 機構は、概要調査地区等を選定しようとするときは、所要の調査を行い、その結果に基づいて選定するとともに、通商産業大臣の承認を受けなければならない。 ウ 発電用原子炉設置者は、特定放射性廃棄物の最終処分に必要な費用に充てるため、毎年、機構に拠出金を納付し、機構は、この拠出金を通商産業大臣が指定する法人に積み立てなければならない。 3 最終処分の実施 ア 機構は、最終処分計画に従い、拠出金に見合う特定放射性廃棄物の最終処分を行わなければならない。 イ 機構が特定放射性廃棄物の最終処分を行う場合についての安全の確保のための規制については、別に法律で定めるところによる。 4 その他 機構の業務が困難となった場合の措置、指定法人に関する事項、罰則その他所要の措置について定める。 5 施行期日等 ア この法律は、一部を除いて、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。(基本方針及び最終処分計画、機構の設立に関する規定等については、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から、最終処分の実施等に関する規定については、安全の確保に関する別の法律の施行の日から施行する。) イ その他必要な経過措置等について定める。 ※ 5月31日 成立 (目 的) 第1条 この条例は、わが国のエネルギー政策の推進に協力するために、深地層の研究に対する本町の基本方針を定め、地域の振興を図ることを目的とする。 (基本方針) 第2条 幌延町は、核燃料サイクル開発機構(以下「サイクル機構」という。)から立地の申し入れを受けた深地層の研究施設について、原子力政策の推進と地域の振興に資することから、これを受け入れるものとする。 2 幌延町は、深地層の研究を円滑に推進するために、研究の期間中及び終了後において、町内に放射性廃棄物の持ち込みは認めないものとする。 3 幌延町は、深地層の研究施設の設置にあたり、国、北海道及びサイクル機構に対して、地域の振興に資する施策が積極的に実施されることを要望するものとする。 (基本方針の通知) 第3条 幌延町は、第1条の目的達成のため、前条に定める基本方針を国、北海道及びサイクル機構等に通知するものとする。 (規則への委任) 第4条 この条例の施行に関し、必要な事項は、規則で定める。 附 則 この条例は、公布の日から施行する。 (目 的) 第1条 この規則は、深地層の研究の推進に関する条例(平成12年条例第25号。以下「条例」という。)の施行について必要な事項を定めることを目的とする。 (通知の方法) 第2条 条例第3条に規定する通知は、条例を添付した文書により行う。 (通知の時期) 第3条 条例第3条に規定する通知の時期は、条例の施行後、すみやかに行うものとする。なお、条例の施行後において、深地層の研究を円滑に推進することに影響を及ぼすと見込まれる事実が生じた場合においては、その事実が生じたとき以後、すみやかに行うものとする。 附 則 この規則は、公布の日から施行する。 |