人生のあゆみ
今やりたいことをやるという決意
Ambitious Farm(株)の代表を務める柏村章夫さんは、非農家出身ではあるが、若い頃から農業に興味があったという。(もともとは酪農が夢であったとのこと)
その夢の実現に近づくため、道内の農業系大学へ進学。大学卒業後は、広島県の穀物商社にいったんは就職したものの、農業をやりたいという気持ちは、日々強まるばかり。その想いを実現するため、江別市の実家で農業に従事している同級生で親友の伊藤さん(江別市の実家で農業に従事)に連絡し、就農の決意を伝えた。その後、江別市で約2年間の農業研修を終え、就農。就農に当たっては、伊藤さんと共に法人を設立し、伊藤さんの父から農地を借りて経営を行っている。
つくり手のやりがい
Ambitious Farm(株)は、水稲の他、じゃがいもや多品目の野菜を栽培し、自分たちで運営するたべる人とつくる人をつなぐ「ふたりのマルシェ」や定期購入の「当日便」により消費者にお届けしている。
会社の設立当時は、契約栽培を中心に行っていたが、お客様からの要望に応えたいという思いから、その時々に消費者ニーズに応えた作物を常に考え、SNSでの発信力を意識した野菜の品揃えを重視してきた。
農場では、ブロッコリーやカラフルポテト等が主力となっているが、多品目を栽培するには、作業する従業員との情報共有を常にしておくことや、農場全体の作業について、従業員同士の情報共有も大切にしている。
日々の農作業は複数人のチームによって行われるが、その日の作業内容は、チームで組み立てていく。翌日には、その作業を違うチームが引継ぐ場合もあるため、農場全体の作業の進め方が一目で分かるよう、アプリ等を活用することによって、スムーズに進むようにしている。このような工夫が、旬の野菜を複数組み入れて、お客様に届けることができることにつながる。
女性が働きやすい環境を
Ambitious Farm(株)は、女性の力で成り立っていると言っても過言ではないと柏村さんは語る。
農業では、お客さまの気持ちを理解する力、売り方の工夫、SNSでの情報発信の仕方等、女性の力がとても生きる場面が多くあると感じている。
また、一昨年の出来事であるが、台風が直撃し、ビニールハウスや納屋に大きな被害を受けた時、柏村さんは、はじめての経験でもあり、精神的なダメージからなかなか対応策を打ち出せずにいた。その時に、女性従業員がきびきびと根気強く、丁寧に復旧していく姿を見て、女性の柔軟に対応する強い力を実感した。
Ambitious Farm(株)では、女性が働きやすい環境作りとして、子供と一緒に出勤できるし、シフトは従業員に組んでもらっているという。
女性従業員の中には、ママさんが多いので、保育園から電話がきたら30分以内に退社できること、風邪を引いたら無理せず休むことを約束事としており、そのことで、従業員が少ない日があっても、それは仕方ないというのが会社の方針。そういったことが働きやすい、さらには働き続けられる職場につながっている。
柏村さんが大切にしていること
やりたいことを楽しくやる。想いがあって農業を始めたいのなら、それを信じるべき。「今を生きる」という気持ちで、毎日を過ごすことで僕は農業をやれて幸せだと感じている。
農業を行う上では、常にアンテナを張っておくことが大事。いい経営をするためには、情報を掴んでいないとできない。夏場は、自社のマルシェで、対面販売することでたべる人とつくる人で話す機会を設ける。冬場には、業種を問わず、いろいろな人と交流を持つように心がけている。そうしたことで、農作物の生産だけではなく、商品開発のコラボ、企業への派遣等を行い、常に刺激を受け社員が前向きに考えられるようにしている。
全員が目指す未来のAmbitious Farm
Ambitious Farm(株)の事務所には、一枚のデザイン画が壁に飾られている。
2017年に経営者が集まる経営研究会(中小企業家同友会経営指針研究会)に参加した時に、自社の将来ビジョン(10年ビジョン)を考える機会があった。
一緒に働く仲間も夢を抱いて農業できるような目標がビジュアルにあることも必要だと考えた。
その後、社員とパートさんに自分がやりたいことや将来どんな農園で働ていたいか夢や希望を面談で聞いた。そして、2018年に友人に想いを伝えて一つの絵にしてもらい、Ambitious Farm(株)未来ビジョン※ が出来た。
未来ビジョンの中には、農業生産を行うエリア、農業体験できるエリア、新設した自社社屋、ふたりのマルシェ農場店、農場レストラン、自社ビール樽、宿泊施設、農業を学べる図書館、足湯、星空が見えるガラスのイグルー等が描かれている。
この未来ビジョンには、Ambitious Farm(株)で働く人達の夢や理想がたくさん詰まっており、働く人達にとっていい農場であることが描かれている。10年後という枠で作成したが、実現には焦らず、人の成長と一緒に事業展開を考え、今の時代に完成できなくても、次の世代の人達がやってくれると思うし、また将来、その時のメンバーでビジョンを描き直してもいい。
日々の農作業は地道で、土づくりに始まり、草取りなどが中心となる。そんな中で働く人の想いが目に見える形であることがモチベーションの維持につながっている。