概要
令和5年(2023年)年7月12日(水)~13日(木)、畑地かんがい試験研究会を開催しました。
本研究会は、畑地かんがい推進モデルほ場設置事業(以下、「モデル事業」という)により行われる畑地かんがいに関する試験・調査を効果的に推進し、これに関する情報を関係者間で共有することで畑地かんがいによる水利用技術の確立とその普及を図っていくことを目的としています。
1日目は、十勝総合振興局講堂(帯広市)で試験研究会を開催し、2日目は、同管内帯広市で現地検討会を開催しました。
当日は、地方独立行政法人北海道総合研究機構各農業試験場の研究員をはじめ、北海道開発局、関係開発建設部、関係(総合)振興局、関係農業改良普及センター、北海道農政部のほか、一般財団法人北海道農業近代化技術研究センターから総勢120名が参加し、調査結果報告及び意見交換を行いました。
【主な内容】
(1)各地区報告
「斜里地区(斜里町)」の取組(オホーツク総合振興局東部耕地出張所)
(概要)
斜里町では、これまでに国営事業等により畑地かんがい施設の整備が進められ、多目的給水栓およびほ場給水栓までの整備が完了しているが、防除用水利用が主体であり、ほ場散水施設(リールマシン)まで整備されたほ場は少ない。
今後、地域農業の安定化のためには、かんがい用水利用による基幹作物の生産性の向上、収量・品質の高位安定化が期待される。さらに、地域振興作物(高収益作物)であり計画的生産と収穫量の安定化が求められるニンジン栽培では、収量増加と規格内率の向上を図る必要がある。また、地域営農に合致した省力的な末端散水計画を検討し、かん水効果を確実に発揮するためには、地域の土壌条件、気象条件、栽培作物・栽培技術に即した畑地かんがい技術の早期確立とその普及が重要となる。
そのため、今後の地域営農の展開に適合する畑地かんがい技術の確立と、あわせて円滑な末端施設の利用推進の啓発普及に資することを目的に畑かん推進モデルほ場設置事業を実施(H30~R4)し、かん水調査等の結果を踏まえ、ニンジンなどの野菜、小麦、テンサイ、バレイショ、豆類などの畑作物のかん水の目安(かん水指標)を作成する。
現地ほ場調査を実施した期間R1~R4における、かんがい期間(5~7月)の降水量を比較したところR1の降水量合計値は131.0mm、R3は107.0mmとなり、平年値に比べ80~100mm程度少なかった。一方、R4は253.0mmとなり、平年値に比べ45mm程度多かった。
最も降水量の少なかったR3では、6月中旬~8月上旬にかけ、記録的な干ばつとなったが、ニンジン、大豆ほ場でかん水による水分ストレス軽減により、無かん水区と比較し、収量が各々43%、20%増収となる結果となった。
上記地区のほか、道内5地区(帯広かわにし、芽室びせい、美瑛、上磯、網走川中央)でも地域農業に適合した水利用技術の確立とその普及を目的にモデル事業を実施しており、その調査結果の報告について意見交換を行いました。
今後とも、本研究会を通じて、畑地かんがいの技術を普及していくこととしています。
<研究会の様子(十勝会場)>
(2)現地検討会
2日目は、畑地かんがいモデルほ場設置事業 帯広かわにし地区の試験ほ場を見学し、かん水による作物の生育状況について確認しました。