不当労働行為の審査

不当労働行為として禁止されている行為

わが国の憲法は、「労働者が団結する権利・団体交渉をする権利・団体行動をする権利」を保障していますが、労働組合法は、この労働三権を具体的に保障するために、こちらのページに掲げる行為を不当労働行為として禁止しています。

不当労働行為の救済

命令

   使用者の行為が労働組合法第7条に違反すると思われる場合、労働者や労働組合は労働委員会に救済の申立てをして、不当労働行為がなされた前の状態に回復するように使用者に命令することを求めることができます。
 労働委員会は、救済申立てがあれば審査を行って、申立てのような事実があると認めたときには、使用者に対し、不当労働行為を禁止する命令をします。
 例えば、正当な組合活動をしたために解雇された労働者を、元の職場に復帰させ(原職復帰)、その間に得たはずの賃金を支払う(バック・ペイ)ように命令したり、あるいは組合の運営に対して支配介入したことについて今後行わない旨の文書を掲示ないし手交するよう命令したりします。
 命令について不服がある場合は、申立人でも使用者でも命令書の写しを交付された日の翌日から起算して15日以内に中央労働委員会に再審査を申し立てることができます。
 労働委員会から出された命令は、交付の日から効力を生じ、中央労働委員会に再審査申立てをした場合でも、この効力は停止しません。
 この再審査を申し立てない使用者は、命令書の写し交付の日から30日以内に、また、申立人は命令書の写しを交付された日の翌日から起算して6か月以内に、それぞれ札幌地方裁判所に対して、命令の取消しの訴え(行政訴訟)を提起することができます。
 使用者が行政訴訟を提起した場合、労働委員会は判決が確定するまで、使用者に命令を履行することを命ずるよう地方裁判所に申し立てることができます(緊急命令の申立て)。
 このように、定められた期間内に中央労働委員会や地方裁判所へ再審査の申立てや訴えを起こさないと、労働委員会の命令は確定します。
 使用者は、確定した命令を履行しなければなりません。履行しない場合は、労働組合法の定めに従い、50万円(命令が作為を命ずるものであるときは、その命令の日の翌日から起算して不履行の日数が5日を超える場合にはその超える日数1日につき10万円の割合で算定した金額を加えた金額)以下の過料に処せられます。

和解

 不当労働行為として申し立てられた事件は労働委員会の命令で解決するほかに、和解によって解決するケースが相当あります。
 審査に当たる労働委員会でも審査の途中において、いつでも、当事者に和解を勧めることができる仕組みになっています。
 和解が成立したときは、事件は終了します。

 和解に金銭の一定額の支払等を内容とする合意が含まれる場合は、当事者双方からの申立てに基づき、和解調書を作成することができます。
 和解調書は民事執行法上の債務名義とみなされますので、強制執行を裁判所に申し立てることができます。 

不当労働行為の審査手続

審査手続フロー図

救済の申立て

1 申立ての方法

 労働働組合法第7条に該当する使用者の行為により不利益な取扱いを受けた労働者や、団結権の侵害を被った労働組合(申立人)は、その使用者を相手方(被申立人)として、労働委員会に救済を求めることができます。
 申立ては、申立書を労働委員会に提出して行います。口頭による申立てもできますが、この場合は、労働委員会事務局の職員が聞いて申立書を作成し、読み聞かせた上、署名又は記名押印してもらいます。
 申立書には、次の事項を記載する必要があります。これらの事項に欠けるものがある場合は、労働委員会はその部分の補正を勧告することがあります。
 また、この勧告に応じない場合は、却下されることがあります。

・申立人の氏名住所
 申立人が労働組合又はその連合団体であるときは、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地。
 なお、代理人による申立ては認められていません。

・被申立人の氏名及び住所
 被申立人が法人その他の団体であるときは、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地。

・請求する救済の内容
 これは労働委員会の命令の主文に当たるものですから、不当労働行為を中止させ、それがなかった状態に戻すためにいかなる行為を使用者に行わせるかについて、なるべく具体的に記載してください。

・不当労働行為を構成する具体的事実
 これは救済を求める原因で審査の中心となるものですから、使用者の不当労働行為について、その行為の行われた場所、日時、行為などを明確にし、しかも簡潔に記載してください。

・申立ての日付

2 申立書の補正

申立書に不備な点があったときは、公益委員会議の決定によって、相当の期間を定めて補正してもらうことになっています。

3 申立期間

 不当労働行為のあった日(その不当労働行為が継続する行為であるときは、その行為が終了した日)から1年を経過すると、申立権は消滅します。
 なお、地方公営企業等の労働関係に関する法律第12条の規定による解雇に係る申立ては、解雇された日から2か月以内に申し立てなければなりません。

4 労働組合の資格審査

 労働組合が不当労働行為の救済を申し立てる場合は、その組合が労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合するかどうかの審査を受ける必要があります。

5 申立ての取下げ

 申立人は、命令書が交付されるまでの間であれば、いつでも申立ての全部又は一部を取り下げることができます。

調査

  申立てが受理されますと、調査が開始されます。
 調査の目的は、労使双方の主張を明らかにし、争点を整理するとともに証拠の整理を行って、次に述べる審問の準備をすることにあります。
 調査は、審査委員(場合によっては労使参与委員も含めて)、担当職員が行い、その結果を調書として作成します。
 調査を開始するときは、申立書の写しを被申立人に送付しますから、被申立人は、申立人の主張及びその事実に対し、それぞれ項目ごとに認否(「認める」、「否認する」、「不知」、「知らない」又は「争う」など)をするとともに、主張を答弁書として作成し、労働委員会から決められた日までに提出してください。
 なお、被申立人の答弁書の提出期限は、申立書の写しが送付された日から原則として21日以内です。
 ※ 被申立人の答弁書の提出期限の詳細については、こちら

審問

 労働委員会が不当労働行為の存否を判断するための事実調べをする手続を、審問といいます。
 審問を開始するときは、期日、場所などを当事者に通知します。
 審問は裁判所の口頭弁論に相当するもので、審査委員が指揮し、当事者出席の下に公開で行われます。ただし、公益委員会議が必要と認めたときは、これを公開しないこともあります。また、労働者委員及び使用者委員は、参与委員として審問に参加します。

1 代理人、補佐人の申請

 当事者は、審問に審査委員の許可を得て代理人及び補佐人を伴って出頭することができます。また、代理人又は補佐人は、審査委員に告げて陳述し、又は証人を尋問することができます。
 なお、代理人又は補佐人の資格には、別段の制限はありません。

2 証拠

 当事者は、自分の主張する事実が真実であることを審査委員に理解してもらうために、自己の主張する事実の裏付けとなる証拠を提出する必要があります。
 これには事実の存在を証明する文書(書証)を提出するとか、事実の存在を知っている人に証人として証言してもらう(人証)とかの方法があります。
 書証を提出する場合は、疎明資料説明書を作成し、添付してください。
 労働委員会は、当事者からの申請により、又は必要に応じて職権で証人を呼び出したり、物件の提出を求めます。

3 最後陳述

 事実調べが終わると審問は終結し、当事者は、最後陳述を行います。最後陳述では、審問の全経過を振り返り、争点について自己の主張事実を整理して陳述するとともに、主張し足りないことについて、陳述してもらいます。

4 審問の傍聴

 審問は、特別な場合を除き公開で行われますので、だれでも傍聴することができます。傍聴を希望するときは、当委員会事務局に申し出てください。
 審問の場においては、公正迅速な審査を阻害すると認められる行為があれば、審査委員はこれを注意し、もしこの注意に従わない者があれば退席を命じられます。
 また、当委員会においては、審問室内における写真の撮影、速記、テープレコーダーの使用、旗やプラカードの持込み、その他鉢巻、ゼッケンの着用などは禁止し、リボン・腕章の着用については、禁止はしないが自粛してもらっています。
(→審問の開催予定をこちらに掲載しています。)

合議

 審問が終結すると、公益委員会議を開いて合議を行います。この合議に先立って審問に出席した労使の参与委員は、それぞれ意見を述べます。
 合議は、公益委員だけの非公開の会議で、審査の結果に基づいて事実を認定し、使用者の行為が不当労働行為であるか否かを判断します。不当労働行為であると判断した場合は、労働委員会は、被申立人に対して、申立人が請求している救済内容の全部又は一部を認容した命令を出します。
 また、不当労働行為でないと判断すれば、申立人の救済申立ては、棄却されます。命令書(写し)は、当事者に交付されます。

審査期間の目標と達成状況

 労働組合法によって各労働委員会においては、不当労働行為事件について審査期間の目標を定めるとともに、目標の達成状況を公表することとされていますが、当委員会では、その目標を180日と定めています。
 審査期間とは、申立てから終結までに要した日数のことですが、この目標は、各年の全終結事件における1事件当たりの平均処理日数が180日を超えないようにしたいということを意味しています。
 令和5年の当委員会の1事件当たりの平均処理日数は、377日でした。

終結事件及び1事件当たりの平均処理日数
  終結区分  
年次 命令 和解 取下げ
5 2件
741日
5件
208日
1件
493日
8件
377日
4 3件
1,152日
8件
422日
0件
0日
11件
621日
3 1件
1,246日
5件
320日
2件
79日
8件
376日
2 3件
638日
11件
231日
1件
222日
15件
312日
31・元31・元 1件
1,474日
13件
177日
3件
242日
17件
265日
30 3件
732日
16件
298日
4件
512日
23件
366日

(注) 上段は終結件数、下段は平均処理日数です。

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