北海道行政基本条例をここに公布する。
平成14年10月18日
北海道知事 堀 達 也
北海道条例第59号
北海道行政基本条例
目次
前文
第1章 総則(第1条)
第2章 行政運営の基本理念(第2条)
第3章 行政運営の基本原則
第1節 情報公開と道民参加の推進(第3条─第6条)
第2節 総合的、効果的かつ効率的な政策の推進(第7条─第12条)
第3節 道民の権利利益の保護(第13条─第15条)
第4節 道民との協働(第16条)
第5節 市町村等との連携協力(第17条─第19条)
第4章 知事及び職員の責務等(第20条─第22条)
附則
国際化をはじめ、少子高齢化の進行や高度情報化の進展、環境重視型社会への移行など北海道を取り巻く社会経済情勢は大きく変化しており、また、社会の成熟化に伴い、道民の価値観も多様化している。
こうした中で、道内では、多くの人々が、各地域の多様な特性を生かした産業の新たな展開に向けて、あるいは、福祉、環境、教育など様々な分野における公共的な課題の解決に向けて、積極的な活動を繰り広げている。
地方分権が進展する今日、この北海道において、地方自治を更に発展させて、地域のことは地域の責任の下に決定する分権型社会を実現し、個性豊かで活力ある地域社会を築いていくためには、地域づくりの主体である道民と道及び市町村がそれぞれの役割と責任を果たし、互いに連携を深めることによって、共に新しい時代の進路を拓(ひら)いていくことが求められている。
こうした観点から、道政の推進に当たっては、道民と情報を共有し、道民が道政に参加する機会を拡大するとともに、公共的な分野における道民との協働を進め、更に市町村との連携協力を深めていかなければならない。
道では、これまで、道政改革を進め、情報公開や政策評価などの行政運営に関する制度を整備してきたが、今後とも、このような取組を更に進めるとともに、様々な制度を相互に連動させることにより、本道の実情に即した質の高い政策を展開し、多様化する課題や道民のニーズに対応していかなければならない。
このような考え方に立って、道政運営の全般にわたる指針として、基本となる理念及び原則を明らかにすることにより、新しい時代に対応した道政運営を確立し、道民及び市町村と一体となって、活力に満ち、ゆとりと豊かさを実感できる北海道を築いていくため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、道の行政運営に関し、基本的な理念及び原則を定め、並びに知事及び職員の責務等を明らかにすることにより、地方分権の進展に対応した主体的な道政運営を確立するとともに、道民の信頼にこたえる道政を実現し、もって道民の福祉の向上を図ることを目的とする。
第2章 行政運営の基本理念
第2条 道(議会を除く。以下同じ。)は、道政が道民の信託に基づくものであるという認識の下に、次に掲げる事項を基本として、行政運営を行うとともに、不断にその改革を推進しなければならない。
(1) 道政の諸活動の公開性を高め、道政に対する道民の理解を促進するとともに、道政への道民の参加を推進すること。
(2) 北海道の将来を展望し、地域の実情に即した政策を総合的、効果的かつ効率的に推進すること。
(3) 行政手続に関し公正の確保と透明性の向上を図ることにより、道民の権利利益を保護すること。
2 道は、公共的な課題を自ら解決しようとする道民の自主的かつ自発的な活動を尊重し、道民との協働による地域社会づくりを進めなければならない。
3 道は、道民に最も身近な行政を担い、地域における政策を総合的に推進する市町村の役割の重要性にかんがみ、行政運営に当たっては、市町村との対等な関係の下に、市町村と連携協力を図らなければならない。
第3章 行政運営の基本原則
第1節 情報公開と道民参加の推進
(情報の公開)
第3条 道は、道政の諸活動について、その公開性を高め、道民に説明する責任を果たすため、公文書の開示を適正に行うとともに、道政に関する情報(政策の形成過程にあるものを含む。次項において同じ。)の積極的な提供に努めなければならない。
2 道は、道政に関する情報を道民に分かりやすく提供するとともに、道民が迅速かつ容易に道政に関する情報を得られるよう多様な媒体の活用等に努めなければならない。
(道民の参加)
第4条 道は、政策の形成過程において、道民の意向を的確に把握し、これを政策に反映するため、道民が参加する機会の拡大に努めなければならない。
2 道は、公聴会等の道民参加の機会を設ける場合には、特定の地域に偏ることのないよう配慮しなければならない。
3 道は、行政運営及び政策の基本的な方針その他の重要な事項を定める計画及び条例の立案に当たっては、その案の内容その他必要な情報を公表し、道民の意見を求めるとともに、その意見に対する道の考え方を公表しなければならない。
4 道は、道民生活にかかわる道政上の重要な課題に関し、広く道民の意思を直接問う必要があると認めるときは、当該課題に関し、別に条例で定めるところにより、道民による投票を行うことができる。
(附属機関等の委員の公募等)
第5条 道は、附属機関等の委員を任命する場合には、その設置の目的等に応じ当該委員を公募し、これに応じた者からも任命するよう努めなければならない。
2 道は、附属機関等の会議を原則として公開しなければならない。
(意見、提言等への対応)
第6条 道は、道政に関する道民の意見、提言等を尊重し、これを行政運営に反映するよう努めるものとする。
第2節 総合的、効果的かつ効率的な政策の推進
(総合計画の策定等)
第7条 道は、長期的な展望に立って、道の政策の基本的な方向を総合的に示す計画(以下「総合計画」という。)を策定しなければならない。
2 道は、総合計画の策定に当たっては、道民及び市町村の意向を反映するため、道民及び市町村の参加機会を確保しなければならない。
3 道は、総合計画の基本的な方向に沿って、効果的かつ効率的に政策を推進するとともに、その推進状況を定期的に公表しなければならない。
4 道は、特定の分野における政策の基本的な方向等を明らかにする計画については、総合計画が示す政策の基本的な方向に沿って策定し、及び推進しなければならない。
(政策評価の実施等)
第8条 道は、効果的かつ効率的に行政を推進するとともに、道政に関し道民に説明する責任を果たすため、政策評価を実施し、これに関する情報を道民に公表しなければならない。
2 道は、政策評価に関する道民の意見を政策評価に適切に反映させるよう努めるものとする。
3 道は、政策評価の結果を予算編成、組織及び機構の整備並びに総合計画の推進管理等に反映させるものとする。
(財政運営等)
第9条 道は、中長期的な展望に立って、自主的かつ健全な財政運営を行わなければならない。
2 道は、毎年度の予算及び決算その他財政に関する事項を、道民に分かりやすく公表しなければならない。
(執行体制の整備)
第10条 道は、社会経済情勢の変化及び多様化する課題に的確に対応するため、組織及び機構の不断の見直し、民間能力の活用等により効果的で効率的な執行体制を整備しなければならない。
(外部監査人の監査)
第11条 道は、効果的で効率的な行政運営を確保するため、専門性及び独立性を有する外部監査人(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の三十第一項に規定する外部監査人をいう。)が実施する財務に関する事務等に関する監査の結果等を踏まえ、必要な措置を講じなければならない。
(法令の解釈等)
第12条 道は、地方自治の本旨及びこの条例の趣旨に基づいて、法令を解釈し、運用するものとする。
2 道は、行政運営に関する基本的な制度及び政策の推進に関する基本的な事項について、条例化に向けた必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第3節 道民の権利利益の保護
(許可等の処分等に関する手続)
第13条 道は、条例等に基づく許可等の処分及び届出並びに行政指導に関する手続に関し、許可等の審査に関する基準、申請から処分までに要すべき標準的な期間等の共通する事項を定めることにより、行政手続における公正の確保と透明性の向上を図らなければならない。
(苦情の審査等)
第14条 道は、その業務執行に関する道民からの苦情に対し、中立的な立場にある者による審査等が行われた場合には、その結果を踏まえ、必要な措置を講じなければならない。
(個人情報の保護)
第15条 道は、個人に関する情報の保護を図るため、個人に関する情報の収集、利用、提供、管理その他の取扱いを適正に行わなければならない。
第4節 道民との協働
第16条 道は、道民との適切な役割分担の下に、様々な分野における公共的な課題の解決を図るため、道民との協働を積極的に進めなければならない。
2 道は、道民との協働を推進するための環境の整備に努めなければならない。
第5節 市町村等との連携協力
(市町村との連携協力)
第17条 道は、地域の実情に即した政策を推進するため、市町村と適切に役割を分担し、連携協力しなければならない。
2 道は、市町村にかかわる重要な課題に関する政策の形成過程において、関係する市町村の意見を求め、これを政策に反映するよう努めなければならない。
(都府県等との連携協力)
第18条 道は、相互に共通する政策課題を解決するため、他の都府県等との連携協力に努めるものとする。
(国への協力要請及び意見等の提出)
第19条 道は、本道の特性並びに道民及び市町村の意向を踏まえた政策を効果的に推進するため、国に対し必要な協力を求めるとともに、積極的に意見を述べ、又は提言を行うものとする。
第4章 知事及び職員の責務等
(知事の責務)
第20条 知事は、第2章に定める基本理念及び前章に定める基本原則に基づき道政を推進する責務を有する。
(職員の責務)
第21条 職員は、第2章に定める基本理念及び前章に定める基本原則に基づき職務を遂行する責務を有する。
(職員の育成等)
第22条 知事等任命権者は、本道の課題に的確に対応した政策を推進するため、職員の育成を図らなければならない。
2 職員は、政策の立案及び遂行に関する能力の向上に努めなければならない。
附 則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 知事は、平成21年4月1日から起算して五年を経過するごとに、道政運営の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、この条例の施行の
状況等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附 則(平成21年3月31日条例第15号抄)
1 この条例は、公布の日から施行する。(後略)