北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律に基づき北方領土隣接地域市及び町の長の意見を聴いて道が作成する「北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する計画」について、令和5年度から令和9年度までの5年間を計画期間とする第9期計画が、令和5年3月27日付けで国土交通大臣の同意を得ましたので、その内容について紹介します。
1 振興計画の作成について
北方領土隣接地域は、北方領土問題が未解決であることにより、戦後はその望ましい地域社会としての発展が阻害されるという特殊な事情の下に置かれています。
このような状況に対応するために国において「北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律(昭和57年法律第85号。以下「特別措置法」という。)」及び「北方領土問題等の解決の促進を図るための基本方針(平成31年1月25日内閣府・外務省・国土交通省告示第1号。以下「基本方針」という。)」が定められました。
この法令により、北海道知事は、北方領土隣接地域の市及び町の長の意見を聴いて北方領土隣接地域を安定した地域社会として形成するのに資するための計画を作成し、国土交通大臣に協議を行い、同意を求めることができるものとされています。
道ではこの規定に基づき昭和58年以降、「北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する計画(以下「振興計画」という。)」を策定し、各般にわたる施策の総合的・計画的な推進を図ることとしています。
2 振興計画の性格
振興計画は北方領土返還要求運動の拠点である北方領土隣接地域を安定した地域社会として形成するのに資するために必要な施策の大綱を定めるものです。(特別措置法第6条第1項及び基本方針第4)
3 振興計画に基づく市町事業に係る特別の措置
(1) 国の負担割合の引上げ措置(特別措置法第7条)
※ 引上げ率:1.25倍を上限
※ 対象事業:道路、河川、下水道、住宅等
(2) 地方債についての配慮(特別措置法第8条)
(3) 北方領土隣接地域振興等基金の設置(特別措置法第10条)
(参考)北海道北方領土隣接地域振興等基金条例
(4) 財政上の措置等(特別措置法第10条の2)
4 振興計画の対象地域
北方領土隣接地域(根室市(歯舞群島の区域を除く。)、別海町、中標津町、標津町及び羅臼町)を対象としています。
5 振興計画の期間
振興計画は、「基本方針」の規定により、おおむね5年を一期とし、昭和58年度から北方領土が我が国に返還されるまでの間、継続して策定します。
(これまでの策定状況)
第1期計画 昭和58年度~昭和62年度(内閣総理大臣承認 S58.8.19)
第2期計画 昭和63年度~平成4年度(内閣総理大臣承認 S63.7.6)
第3期計画 平成5年度~平成9年度(内閣総理大臣承認 H5.6.4)
第4期計画 平成10年度~平成14年度(内閣総理大臣承認 H10.7.7)
第5期計画 平成15年度~平成19年度(国土交通大臣同意 H15.10.17)
第6期計画 平成20年度~平成24年度(国土交通大臣同意 H20.4.18)
第7期計画 平成25年度~平成29年度(国土交通大臣同意 H25.4.26)
第8期計画 平成30年度~令和4年度(国土交通大臣合意 H30.5.11)
6 振興計画の内容等
振興計画には、特別措置法及び基本方針により次の内容を規定することとされています。
(1)振興計画に定める事項(特別措置法第6条第2項)
一 北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する基本的な事項 |
(2)振興計画の施策の基本方向(基本方針第4-2(4))
ア 北方領土隣接地域における社会・経済の安定的な発展の基盤を形成するため、交通施設及び通信施設の整備を図るとともに、国土の保全及び水資源の開発を図る。 |
7 諸計画との整合性等
(1) 振興計画の策定に当たっては、北海道総合開発計画との整合性を保つよう十分配慮する。
(2) 振興計画の策定に当たっては、計画対象区域の市町の基本構想等との関連に十分配慮する。
8 推進体制等
(1) 振興計画の推進に当たっては、振興計画の策定主体である北海道が、国、計画対象区域の市町等と緊密に連絡するとともに、その進捗管理に主体的に取り組むものとする。
(2) 振興計画の推進に当たっては、北海道及び計画対象区域の市町が中核的な役割を果たすこととし、計画終了時点の定量的な到達目標及び工程表の取りまとめ及び年度更新、効果検証等を行うものとする。
9 その他の留意事項
(1) 振興計画の策定及びその実施に当たっては、自然環境等環境の保全に十分配慮する。
(2) 振興計画に基づき北方領土隣接地域の市町が行う事業については、当該市町の財政運営に支障を及ぼさないよう十分配慮する。
(3) 振興計画の実施に当たっては、今後の国、地方公共団体の財政事情等社会経済情勢の推移に応じて、弾力的な運用を図る。
(4) 北方領土隣接地域振興等基金の取崩しについて、地域振興等の推進に向けた事業の必要性や緊急性を踏まえるとともに、同基金の安定的な運営を考慮して行う。
10 第9期振興計画について
第9期北方領土隣接地域の振興及び住民の安定に関する計画(本文)
第9期振興計画の概要
(1)計画作成の主な経過
令和4年11月2日 計画(素案)を道議会に報告
令和4年11月4日 パブリックコメント(~12月5日)
令和5年2月16日 計画(案)を道議会に報告
令和5年3月10日 国土交通大臣へ同意協議
令和5年3月27日 国土交通大臣合意
(2)施策の基本的な方向及び主な施策(第3章)
第8期計画を継承し6つの柱立てを設定し、計画期間中の市町の予定事業の全体を網羅しています。