1.森林認証制度が生まれた背景
1970年代に熱帯林の減少が世界的な問題となりました。ヨーロッパでは、環境保護団体が中心となり熱帯材の不買運動が行われることとなり、このうち持続可能な森林経営のもと産出された木材と見なせるものについてはラベルが付されることになりました。
1999年ブラジルで開催された「地球サミット(国連環境開発会議)」では、熱帯林などの世界の森林減少問題が取り上げられ、「AGENDA21」と「森林原則声明」が採択され、世界各地域で森林経営の持続可能性や生物多様性の保全などを客観的に把握・評価する「ものさし」としての「基準・指標」の作成が進められました。これにより、現在までに世界各地で9つの国際的な基準・指標づくりやモニタリングの取組が行われています。代表的なものとして、我が国を含む環太平洋諸国の温帯林・亜寒帯林を対象とした「モントリオールプロセス」、欧州の温帯林等諸国による「汎欧州プロセス」、国際熱帯木材機関(ITTO)加盟の熱帯木材生産国による「ITTO基準・指標」などがあります。
森林認証制度は、こうした取組を森林経営の単位(林班など)に対応させ、評価出来るように発展したもので、森林所有者や木材加工事業者等による自発的な申請に基づき、独立した第三者機関が環境・経済・社会の3つの側面からなる基準・指標を基に審査・認証し、独自のマークを付したラベルを木材製品に貼り流通させ、消費者による選択的な購買を通じて、持続可能な森林経営を支援する民間主体の制度です。
2.森林認証制度の仕組み
森林認証は、森林の管理を認証するFM(Forest Management)認証と、加工・流通過程の管理を認証するCoC(Chain of Custody)認証の連鎖から成り立っています。森林認証製品が一般消費者の手に届くまでには、最終製品にいたるまでの生産や加工、流通に関わるすべての組織が認証を受けていなければならず、森林認証材の適切な管理のチェーンがつながると、最終製品に『森林認証ロゴマーク』をつけて販売することが可能となります。
3.「持続可能な開発目標(SDGs)」と「森林認証制度」
SDGsは2015年9月の国際サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までの国際社会全体の目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール(目標)・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない社会の実現を目指し、世界全体が経済・社会・環境をめぐる広範な範囲の総合的に取り組むこととしています。
森林認証制度が目指す”持続可能な森林管理”は、単に環境的な問題だけではなく、社会的、経済的、文化的な面も対象としており、SDGsの考え方と本質的なところでつながっています。
SDGsの17の目標のうち、目標15「陸の豊かさも守ろう」では、森林認証が達成度を測る指標のひとつとなっており、さらに、目標12「つくる責任 つかう責任」や目標13「気候変動に具体的な対策を」
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」など、他の様々な目標達成にも間接的に貢献できる制度です。
4.北海道の取組
道内では、FSCで、平成15年に下川町(下川町森林組合を代表として、下川町と国有林による3者)、平成17年に美幌町(美幌町森林組合を代表として、美幌町と株式会社新宮商行による3者)が森林管理認証を取得したのを契機に、急速に各地で認証取得に向けた取組が拡大しました。
その後の認証取得はSGECでの取得が中心となり、オホーツクフォレストネットワークや十勝森林認証協議会、はこだて森林認証推進協議会など、地元の市町村や森林組合、造材業者、木材加工業者などで地域協議会を設立し、地域一体で取得する取組が多くなっております。
こうした結果、令和6年3月31日時点の道内の森林管理認証の取得面積は約152.7万ヘクタールとなり、全国の認証面積の約59.2%を占めています。また、各地域の協議会では、認証取得後も、森林認証材の需要や販路拡大に地域一体で取り組んでおり、道はこうした協議会の運営などの支援や、道有林での認証取得を進めてきました。
北海道では、今後も引き続き、森林認証制度の普及や、全国一の森林認証面積を有する本道の優位性を活かしたPR、自発的に取り組む道内各地域の森林認証に係る活動を支援することなどにより、森林認証制度を活用した特色のある地域づくりを総合的に支援していきます。
5.地域の取組
- 当麻町森林組合:当麻町産材活用促進住宅等新改築プロジェクト
当麻町森林組合では当麻町と連携して、森林認証材のPRと需要拡大を目的に、当麻町産の森林認証材(カラマツ、トドマツ)を住宅の構造部に使用した住宅についてSGECプロジェクトCoC認証を取得する取組を進めています。令和5年4月に個人新築住宅20戸について全国で初めて一括して認証を取得したほか、令和6年にも10戸の住宅について取得するなど継続した取組が進められています。
- 南富良野町:道の駅を核としたまちの賑わい拠点施設整備事業
南富良野町では道の駅に併設する複合商業施設の新築に当たり、構造材に南富良野町から産出した森林認証材(カラマツ、トドマツ)を使用しており、令和4年3月にSGECプロジェクトCoC認証を建物の全体認証で取得しました。認証材使用率は88.48%と国内最大級のSGECプロジェクト認証構造物です。
- 音更町:道の駅おとふけ(建屋構造材部分認証プロジェクト)
音更町では、道の駅おとふけの新築に当たり構造材の一部(梁、桁、母屋など)に音更町有林から産出した森林認証材(カラマツ)を使用した道の駅として令和3年6月に日本で初めてプロジェクト認証を取得しました。
- 美深町:北海道美深町仁宇布小中学校建設
美深町では、美深町立仁宇布小中学校の新築にあたり、建物全体で使用する木材のうち約7割以上について、美深町内の町有林及び道有林から産出した森林認証材(カラマツ、トドマツ)を使用したことから、大規模木造建築物としては、国内初となる構造物で令和3年3月にSGECプロジェクトCoC全体認証を取得しました。
- 美深町、南富良野町、当麻町森林組合による取組の詳細は、下記の外部リンクをご参照ください。
上川地域水平連携協議会