1 ナラ枯れとは
「ナラ枯れ」は、カシノナガキクイムシ(以下「カシナガ」という)が持ち運ぶ病原菌(以下「ナラ菌」という)により、ミズナラやカシワ、コナラなどのナラ類やシイ・カシ類の樹木が枯死する伝染病です。
全国的には本州を中心に広がりを見せていましたが、北海道においても令和5年(2023年)10月に道南地域で初めて被害が確認されました。令和6年(2024年)も道南地域で被害が確認されました。
カシノナガキクイムシ
体長5mm程度
ナラ枯れの特徴
カシナガがナラ類に穿入すると、カシナガが持ち込んだナラ菌の作用により、道管が目詰まりし通水障害が発生します。この結果、葉が赤く変色し、枯死に至ります。
カシナガが穿入した木の根元には、木くずや糞の混合物(フラス)が堆積するほか、幹には穿入した痕跡があります。
本州では、幹の太さが30cmを超える大径木の被害が多いことや、カシナガが穿入した痕跡である直径1~2mm程度の穴が多数あることが特徴とされている一方で、北海道では、幹の太さが30cm未満の比較的細い樹木でも被害を受けていることや、カシナガの穿入した痕跡の数が少なくても枯死に至っていることが確認されています。
ナラ枯れ被害木
木くずや糞の混合物(フラス)の様子
2 北海道におけるナラ枯れ被害対策
北海道に自生するミズナラなどのナラ類は、カンバ類と並ぶ北海道の広葉樹の代表的な樹種群の一つであり、家具材や床材、薪炭材などに利用されるほか、山地災害防止、生物多様性の保全などの公益的機能を有する森林を構成する重要な広葉樹資源です。
こうした貴重なナラ類等をナラ枯れ被害から守るためには、早期の被害把握と被害木処理が重要であることから、北海道では北海道森林管理局や市町村、試験研究機関、林業関係団体等と連携し、ナラ枯れ被害対策に取り組んでいます。
2-1 北海道ナラ枯れ被害対策基本方針
行政機関、森林所有者、林業・木材事業者などの関係者が共通認識のもとで被害拡大防止対策に取り組むため、「北海道ナラ枯れ被害対策基本方針」を策定しました。
2-2 ナラ枯れ被害地域(令和7年4月1日現在)
「北海道ナラ枯れ被害対策基本方針」に定める被害地域は次のとおりです。被害地域は、被害の発生状況に応じて適宜変動します。
被害地域に関するお問い合わせは、北海道水産林務部林務局森林整備課のほか、渡島総合振興局産業振興部林務課や檜山振興局産業振興部林務課、各(総合)振興局森林室までお願いします。
2-3 ナラ枯れの被害把握について
(1)生息調査 【7月頃】
カシナガが被害木から拡散する7月頃、カシナガの集合フェロモンを用いたトラップを設置し、生息範囲の調査を行います。調査区域は、被害監視区域を基本に試験研究機関の助言を受け決定します。
(2)被害監視区域の設定 【8月・11月】
カシナガ生息調査の結果と直近2年間に確認された被害木から半径30kmの範囲の森林を基本に気温や地形、風向き等を勘案して被害監視区域の設定を行っています。被害監視区域は8月頃に設定し、現地調査の結果を踏まえ11月頃に変更します。
(3)上空調査 【9月頃】
紅葉が始まる前の9月頃にヘリコプターやドローン等を用いて、上空からナラ枯れの特徴である葉が赤く枯れた木を確認し、広域かつ効率的に被害状況を把握しています。上空調査は、被害監視区域において実施しています。
(4)現地調査 【9月・10月】
上空調査により確認された枯れた木がナラ枯れ被害木かを判定するために、現地に赴き、目視による被害木の判定調査を行っています。
2-4 令和6年度のカシナガ生息調査の結果について
令和6年は、北海道内の4町で119匹の生息が確認されました。
カシナガ生息調査の結果(年度別・市町村別)
2-5 被害監視区域
現在の被害監視区域は以下のとおりです。
2-6 ナラ枯れ被害の発生状況
(1)全国の発生状況
全国のナラ枯れ被害の発生状況は、林野庁のHPでご確認ください。
(2)北海道の発生状況(令和6年11月15日時点)
令和6年は、北海道内の3町で182本の被害木が確認されました。
ナラ枯れ被害の発生状況(市町村別・年度別)
3 ナラ枯れ被害木の処理について
ナラ枯れ被害の拡大を防ぐためには、被害木の内部で繁殖したカシナガが飛散しないように駆除することが重要です。上空調査や現地調査で把握した被害木をカシナガが羽化し新たな木へ向かって脱出する来年5月末までに適切に処理できるよう、道では試験研究機関の協力のもと「ナラ枯れ被害木処理マニュアル」を令和6年10月に策定しました。
発生した被害木は、北海道森林管理局や関係市町村、林業関係団体等の関係機関と連携し本マニュアルに沿って適期・適切に処理を進めています。
3-1 被害木の処理方法
(1)伐倒後焼却
被害⽊を伐倒・⽟切りして、樹幹部は焼却処理、伐根部はくん蒸処理する⽅法。
(2)伐倒後チップ化・焼却
被害⽊を伐倒・⽟切りして、樹幹部はチップ化・焼却、伐根部はくん蒸処理する⽅法。
(3)伐倒くん蒸
被害⽊を伐倒・⽟切りして、樹幹部及び伐根部をくん蒸処理する⽅法。
(4)立木くん蒸
被害⽊を⽴⽊のまま、幹にドリル穿孔して薬剤注⼊処理する⽅法。
4 ナラ類等の伐採・移動について
ナラ類の伐採や枝払い等の作業は、カシナガを誘引する成分を揮発させる行為となり、被害拡大につながる可能性があること、カシナガが付着した木材を移動させることは、自然的要因では移動し得ない地域での被害拡大につながる可能性があることから、被害木はもとより未被害木であってもナラ類等の伐採や移動にあたっては、その時期や移動先について留意が必要です。
そのため、基本方針に定めるナラ類等の伐採・移動に係る留意事項の運用として、「北海道におけるナラ枯れ被害木等の伐採・移動に関する指針」を定めました。
森林所有者や林業・木材産業関係者など、ナラ類等の伐採や移動、利用を行う皆さんにおかれましては、ナラ枯れ被害拡大防止のため、本指針の遵守についてご協力をお願いします。
5 ナラ枯れ被害の情報共有
ナラ枯れ注意喚起チラシ
ナラ枯れについて注意喚起を行う際は注意喚起チラシをご使用ください。