北海道建設部
間接効果の算出
1.一次産品の販売額増加効果の分析
道路整備による効果としては、観光客の増加による特産品需要の増大が挙げられる。
ブランド育成によるマーケティング効果は、以下の2つに大別することができる。
(1) ブランド化自体の直接効果(購入意向調査によって把握)
群としての商品への注目率、認知率、購入意向形成力、購入率のアップなど、ばらばらの諸商品をひとつのブランドにまとめることで発生する効果
ブランドコンセプトの呈示により、購入意向の形成力は約25%増加
(2) ブランド化をフォローするマーケティング活動の展開によって発生する効果
(類似した商品・製品等の事例から、来訪者等の購買行動を推定することで把握)
個別の商品をブランドとしてまとめることで、群としてのマーケティング予算が効率的に活用でき、それまで個別商品ではできなかった、下記の「統合パンフレットの作成」「顧客へのDMフォロー販売」等が展開できることによる効果
- 観光客市場
- パンフレット販売
- フォローDM販売
- パブリシティ効果による販売
- 口コミによる販売
- 北海道エリア流通拡大販売
- 都市物産展での販売
地元で何らかのブランド化の活動があると想定した場合における、道路建設の有無に よる効果を求めることとする。つまり、
「道路整備による効果(ブランド育成活動を前提)」=「道路整備効果及びブランド育成効果による市場予測結果」-「道路整備効果が無い場合のブランド育成効果による市場予測結果」
2.観光客の増加効果の分析
各市町村から然別湖までのアクセス距離を用いて構築した重力モデルを適用し、道路整備の有無によりアクセス距離が短縮される(士幌町中心部(国道241号と国道274号の 交点)を経由して然別湖に向かう)道内観光客の増加率を、日帰り客は約50%、宿泊客は30%と算出。
北海道へのツアーを企画している観光業者からのヒアリングにより、道路整備の有無により然別湖を訪れる道外観光客の増加率を5%と算出。
推定された観光客増加数に消費金額単価を乗じることなどから、観光消費金額の増加分を算出する。
3.道路整備による間接効果の算出
観光客の増加による効果としては、売り上げの増加による(1)企業利潤の増加、(2)住民利益の増加という一次効果と、仕入れ先の企業利潤の増加による二次波及効果が考えられる。
小売業、サービス業の販売額増加分に付加価値率等を乗じることで、一次効果分としての企業利潤や被雇用者の利益を算出する。
仕入れ、中間投入分から、産業連関表を用いて道内への波及効果を算出し、従業者の比率で按分することにより、対象地域への二次波及効果を算出する。
間接効果の評価対象期間は、道路の供用開始後40年とし、評価の基準年(平成11年)の現在価値に変換する。
この結果、一次産品の販売額増加効果は約 1,700万円、観光客の増加効果は約44億2,000万円と算出される。
一次産品の販売額増加効果の内、観光客増加によるものは、観光客の増加効果と重複することから、補正を行う。
道路整備による間接効果は、約44億3,000万円と算出される。
道民意識調査の分析
(1)全体的な意識
現状におけるまちのくらしやすさについての満足度、いまくらしているまちへの定住志向は、どちらも65%を超え、かなり高いものとなっている。
全地域を通じて地域格差の存在や地域格差是正の必要性を感じている人が多くおり、まちの地域活性化への取り組みを必要と感じている。
地域格差として感じている内容は、いずれの地域でも利便性、就労機会が上位2つを占めている。
自然環境についての意識は、地域ごとで若干の差違があるものの、86~93%の人が身近な自然環境(まち周辺あるいは然別湖周辺の自然環境)を大切な財産であると考えている。
また、自然環境保全へのまちの取り組みについての意識では、まちが積極的であると考えている人の割合は、地元、十勝、全道の順で低下している。
公共事業の実施にあたって重視すべき事項について、配慮事項ごとに1位あるいは2位と回答した人の合計を多い順に整理した結果が次表である。次表において「経済効果」が全地域で一位もしくは二位となっていることがわかる。また、十勝と全道では、「自然環境」を一位あるいは二位としているが、地元では「地元の熱意」を配慮事項として重要視すべきであると考えている人が多くなっている。
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一位 |
二位 |
三位 |
四位 |
五位 |
地元3町 |
経済効果 |
地元熱意 |
財 源 |
自然環境 |
経済以外 |
十 勝 圏 |
経済効果 |
自然環境 |
財 源 |
地元熱意 |
経済以外 |
全 道 |
自然環境 |
経済効果 |
財 源 |
地元熱意 |
経済以外 |
地域活性化の必要性、地域格差の存在、地域格差を感じている内容、地域格差是正の必要性及び自然環境についての意識と上記の公共事業実施における配慮事項の結果を合わせてみると、基本的には、自然環境に配慮し、経済効果や地域格差の是正に有効な事業の実施が求められているといえる。
また、全地域を通じて地域活性化の必要性を感じている人が約80%おり、地域格差の存在を感じている人が約70~80%いる中で、公共事業実施における配慮事項として経済効果が重視されているということは、公共事業として地域経済の活性化に寄与する事業が求められていると考えられる。
その場合に自然環境への配慮のためにはいくら費用をかけても良いということではなく、全地域を通じて約65%の人がある程度の範囲の費用で実施すべきであると考えている。
(2)士幌高原道路についての意識
士幌高原道路に関する議論についての関心は、全地域を通じて70%を超え、非常に高いものとなっている。
地元において、士幌高原道路が開通した場合の変化、道路を活用した活性化へのまちの取り組み、道路が果たす役割などについては、異なる回答傾向が存在する結果となっている。
すなわち、「開通後の変化として観光客が増加し、沿道環境に与える影響は小さいと考え、また、士幌高原道路がまちに果たす役割は大きいと考えている人」、言い換えれ ば、開通への期待感ともいえるものを持っている人が存在する。
その一方で、「道路が開通しても観光客が増加することはなく、沿道環境に与える影響は大きいと考え、また、士幌高原道路がまちに果たす役割は大きくないと考えている人」、言い換えれば、開通への思いが小さい、あるいは、ないともいえる人が存在する。
このようななかで、開通への期待感ともいえるものを持っている人と、開通への思いが小さい、あるいは、ないともいえる人は、それぞれおおよそ30%程度で拮抗したものとなっており、残りの40%程度の人がどちらにも属さないといった結果になっているといえる。
なお、士幌高原道路に関する議論に関心の高い人は、士幌高原道路を活用した活性化方策をまちで取り組んでもらいたいと考えている人が多く、また、士幌高原道路の果たす役割も大きいと考えている人が多くなっている。
十勝圏では、士幌高原道路が開通しても十勝圏域が活性化するとは考えていない人が、活性化すると考えている人の 1.5倍程度いるという結果になっている。
全道において、士幌高原道路の再評価において重視すべき事項として約60%の人が自然環境への配慮を挙げている。
(3)まとめ
意識調査で把握された道民意識は、全地域を通じて、自然環境を大切にすることへの意識が高く、公共事業の実施において、自然環境への配慮を十分に行い、地域の活性化に寄与する経済効果のある事業を行うことを求めているといえる。
直接的な事業地域である地元3町においては、道路開通への大きな期待ともいえるものを持っている人、そうではない人、及びそのどちらでもない人の3つのグループがあり、道路の開通に伴う環境への影響等についての評価が、意識として分かれていることが把握された。