北海道企業局 平成10年4月
1 苫小牧東部地区第一工業用水道事業の概要
苫小牧東部地区第一工業用水道(以下「苫東工水」という。)は、苫小牧東部地域(以下「苫東地域」という。)における基盤整備の一環として実施するもので、当該地域の多様な産業活動に伴う工業用水需要に対応するため、沙流川水系の多目的ダムを水源として、事業の推進を図ることとなった。
給水区域 |
苫小牧市、早来町、厚真町 |
給水能力 |
250,000立方メートル/日 |
給水開始予定 |
平成14年度(一部給水) |
取水源 |
河川表流水 |
取水地点 |
平取町二風谷 |
事業費 |
68,438,000千円 |
工期 |
昭和57年度から平成18年度 |
※ 本表は、現時点における事業の概要であり、今後、沙流川総合開発事業におけるダム基本計画の変更にあわせ改定されるものである。
その後、「苫小牧東部開発新計画」(以下「苫東新計画」という。)に基づき工業用水の需要想定が日量約140,000立方メートルに下方修正されたことから、水源の検討を行った結果、苫東地域における工業用水の需要に対しては、二風谷ダムからの給水を基本とし、既存の苫小牧地区工業用水道(以下「苫小牧工水」という。)の未契約水量の有効活用を図って対応することとしている。
2 再評価に当たっての調査
道は、苫小牧西部地区(以下「現苫地区」という。)の工業用水の契約の現状やこれまでの企業立地動向などを総合的に判断し、平取ダムからの取水を見送ったところである。
今後は、二風谷ダムを水源とする専用施設の着工時期等、苫東工水事業の進め方について検討を行うこととした。
検討を行うに当たって、現苫地域と苫東地区の工水需要量を推計するため、下記のとおりアンケ-ト調査、ヒアリング調査などを実施した。
ア 苫東地域及び現苫地区で現に工業用水を使用している立地企業の意向などを把握するためにアンケート調査を実施した。
イ 苫東地域に用地を確保している未操業企業や未立地企業の意向などを把握するためにヒアリング調査を実施した。
ウ 関係市町及び関係機関から企業誘致の展望及び取り組み状況などを把握するためにヒアリング調査を実施した。
(1)苫東地域における工水需要量の推計
「苫東新計画」に基づく2020年における工水需要量は、日量約140,000立方メートルと想定されているが、アンケート調査、ヒアリング調査などの結果、日量115,300立方メートルと推計した。
現在の契約基本水量 |
12,730立方メートル/日 |
新規想定の産業の推計 |
90,445立方メートル/日 |
既存立地企業の需要量 |
5,600立方メートル/日 |
未操業企業の需要量 |
5,225立方メートル/日 |
未立地企業の需要量 |
1,300立方メートル/日 |
計 |
115,300立方メートル/日 |
(2)現苫地区における工水需要量の推計について
新規立地企業の工水需要量の推計及び現苫地区の受水企業に対するアンケ-ト調査などの結果では、2020年における工水需要量は、日量116,626立方メートルと推計した。
現在の契約基本水量 |
133,960立方メートル/日 |
新規立地企業による需要増 |
5,926立方メートル/日 |
減量要望の需要減 |
△23,260立方メートル/日 |
計 |
116,626立方メートル/日 |
3 調査結果を踏まえた検討
(1)苫東地域及び現苫地区の工水需要量の年次別水量について
苫東地域及び現苫地区の工水需要量の推計結果を勘案した主要年次別水量は、次のとおりである。
(単位:立方メートル/日)
|
1997 |
2000 |
2005 |
2010 |
2014 |
2015 |
2020 |
苫東需要量 |
12,730 |
23,800 |
45,375 |
68,400 |
86,800 |
92,400 |
115,300 |
現苫需要量 |
133,960 |
126,573 |
112,761 |
114,049 |
115,080 |
115,338 |
116,626 |
計 |
146,690 |
150,373 |
158,136 |
182,449 |
201,880 |
207,738 |
231,926 |
(2)専用施設の着工時期等について
工水需要量の推計結果を勘案すると、苫東地域及び現苫地区の総需要量が苫小牧工水の給水能力日量200,000立方メートルを超えることとなるのは平成26年度と想定され、この工水需要に対応するためには、専用施設の建設に概ね6年程度を要することから、専用施設の着工時期は、平成20年度と見込まれることになる。
苫東地域における企業の新規立地については、近年の道内外の経済情勢の変化等から厳しい状況にある。
一方、企業誘致の優遇措置や他地域とのアクセスの向上など産業基盤整備の促進、広大な用地が確保されている優位性などから、用水型企業からの引き合いがあるなど企業立地に向けた動きも見られる。
いずれにしても、企業局としては事業の運営にあたり常に企業の経済性を発揮することを経営の基本原則としていることから、導水管、浄水場などの専用施設については、苫東地域における工業用水の確実な需要が見込まれるまでの間、着工を繰り延べることが適当と考える。
(3)今後の課題について
ア 苫東工水の位置付け
専用施設の着工時期の繰り延べに伴って、当分の間、二風谷ダムを水源とする苫東工水としての供給が遅れることとなる。
このことにより、苫東地域の既存立地企業や新規の企業誘致などに対する影響が生じることのないように、同地域における工水需要に対する工業用水の位置付けを対外的に明確にする必要がある。
イ ダム管理費用の負担
二風谷ダムは、平成10年度から管理ダムに移行し、工水利水者として管理費用の負担が発生することとなるが、当分の間ダム管理費用の負担の方法などについて国の理解を得る必要がある。
4 検討結果を踏まえた対処方法
(1)専用施設着工の繰り延べに伴う対処方法について
ア 苫東地域における工業用水の需要に対しては、苫小牧工水の未契約水量の有効活用を図ることとしており、豊富低廉な工業用水が確保されていることを内外に示し理解を得る。
イ 着工の繰り延べにより、工水事業の経営への影響が懸念されることから、これに伴う課題について検討し、必要に応じ国に要請していく。
(2)調査結果を踏まえた対応について
ア 契約水量の減量要望への対応
現在、日本工水協会が中心となって料金体系の見直しを含め工業用水道事業全般の諸課題について検討を行っているが、この検討結果を見極め、受水企業から理解を得られる新たな料金制度を検討する。
イ 関係機関の意向への対応
(ア) 企業誘致を促進するために工水の最低契約水量及び料金契約制度の見直しについて検討する。
(イ) 経済動向などに沿った基盤整備等総合的な施策の展開について、引き続き国などに対し要請を行う。