再評価調書(松倉ダムの建設)

平成10年10月30日

1.対象施策の概要

(1)施策の目的・内容(背景・契機)
 松倉川流域においては今まで数多くの洪水被害を受けてきたことから、松倉川流域(本川松倉川、支川湯の川、鮫川等)の治水安全度の向上を図るために、昭和41年度より改修工事を実施している。しかし、昭和 56年8月の豪雨と台風により洪水が発生し、大きな被害を受けたのを契機として抜本的に治水対策を検討する必要が生じ、沿川が高度に土地利用されている状況から地域への影響を考えた結果、大幅な河道改修は困難であると判断し、ダム建設を計画した。
 また、函館市の水道計画においては、人口の増加、水洗化の普及、工業団地への企業誘致などにより水需要の増加が予測され、新たな水源を求める必要があった。
 計画では、洪水調節は自然調節方式とし、ダム地点における計画高水流量220立方メートル/sのうち215立方メートル/sの洪水調節を行うとともにダム下流の流水の 正常な機能の維持と増進を図る。あわせて、函館市の水道用水として、ダム地点で20,000立方メートル/日の取水を可能とする。
【ダムの規模~堤高72.0m、堤頂長300m、堤体積240,000立方メートル】
 
(2)経過(事業実績)
 松倉ダムは多目的ダムとして平成5年度に実施計画調査に着手した。松倉川水系の治水対策は、河道拡幅・分水路・遊水地・放水路等について検討を加えた結果、家屋の移転や耕地への影響が少なく、水需給対策にも対応できる松倉ダム(上流)と分水路によることとした。

(3)停滞要因及び将来の見通し(問題点)
 松倉ダムは、平成5年度から諸調査を実施し、流域の治水対策等の計画概要や自然環境への影響について、住民へ説明するため準備を進めていたが、この間、事業を巡りその必要性や自然環境への影響など様々な意見があり、このままでは事業の円滑な推進に支障をきたし、長期間停滞するおそれがあったことから、一旦立ち止まって住民意向の把握に努め、今後の進め方を検討することとした。

2.検討の基本的視点

 松倉ダムについては、函館市における将来の水需給対策と松倉川水系における洪水災害の防止を目的とする多目的ダムとして計画されたものであることから、函館市における水需給の現状や今後の見通し、松倉川水系における洪水の発生状況や対策案、さらにはダム予定地の自然環境の保全に対する函館市民の意向などを総合的に判断し、事業の必要性・妥当性などについて検討した。

3.道としての対応方針
 
 先に提出された所管部局の検討結果を踏まえ、道としては次のような方針で対応することとする。

(1)事業の取扱い
 函館市においては、人口動態が減少傾向にある中で、給水人口の見直しなどの必要があるとの考え方が示されており、水源確保のためのダム建設の緊急性は認められない。
 また、治水対策については、自然環境の保全を求める市民の声や代替性の可能性があることなどを踏まえ、計画全体を見直す必要が生じた。
 以上の点を総合的に判断し、多目的ダムである松倉ダムの建設は取り止めることとする。

(2)今後の取組み
 治水対策については、河道改修や放水路、遊水地、ダムなどの様々な方策が考えられるが、今後、松倉川水系の一層の安全度の向上に向けて、住民の参加や学識経験者の協力を得ながら、効果的な方策を検討して いくこととし、当面は、現在実施している河川改修の積極的な推進に努 めるものとする。
 また、函館市が今後予定している水需給計画の見直しに当たっては、これまでの経過を踏まえ、道としても必要な協力を行うこととする。

4.その他

 今回の再評価作業では、住民の意向把握などの新しい取り組みを行ってきたが、公共事業などの推進に当たっては、住民の合意形成に努めながら取り組むことが何よりも大切であることを、改めて確認することができた。
 今後、こうした経験を十分踏まえた事業推進に努めていくこととする。

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