2050年までに、温室効果ガス排出量「実質ゼロ」を目指します
気候変動は、道民の皆さんにも密接な問題です。道と一緒に考えてみませんか。
Q.最近、北海道でも暑い日がだんだんと増えているのはなぜでしょうか。
A.地球規模の気候変動による気温の上昇です。気候変動は、世界中で洪水や干ばつなどを引き起こしており、北海道に住む私たちの暮らしや自然にも深刻な影響をもたらしています。
Q. 気候変動の原因は何ですか。
A. 主な原因は、人間の活動から排出される温室効果ガスの増加といわれています。この排出を減らし、気温の上昇を抑えようとする世界共通の動きが、最近ニュースでもよく耳にする、2050年までの「脱炭素社会」の実現です。
Q. 道庁は「脱炭素社会」に向けて、どんな取り組みをしていますか。
A. 道では、2020年3月に知事が「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す」ことを表明しました。北海道の有する豊富な再生可能エネルギーや森林などの吸収源を最大限に活用しつつ、脱炭素化と、経済の活性化や持続可能な地域づくりを同時に進める「ゼロカーボン北海道」の実現を目指します。
環境と経済が調和しながら成長を続ける北海道を目指します。
ゼロカーボン北海道に向けた重点的な取り組み
道が策定した「北海道地球温暖化対策推進計画(第3次)」では、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指すという長期的な視点を持ちながら、2030年度の中期目標として、温室効果ガスを2013年度比で35%削減することとしています。
その実現に向けては、道民や事業者の皆さん、自治体などさまざまな主体と連携・協働して、プロセスや課題を共有し、温室効果ガスの削減・吸収の両面から積極的に取り組みを進めていきます。
多様な主体の協働による地域の脱炭素化
多様な主体と協働のもと、地域の取り組みに脱炭素の観点を導入し、多方面から温室効果ガスの削減を進めます。
また、環境・経済・社会の総合的な向上を目指し、脱炭素化だけでなく、経済の活性化や持続可能な地域づくりを同時に進めます。
豊富な再生可能エネルギーの最大限の活用
本道の豊かな自然や地域資源を利用した再生可能エネルギーの導入などにより、地域や産業の活性化につながる取り組みを進めます。
区分 | 順位(47都道府県中) | |
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(1) | 太陽光発電 | 全国1位 |
(2) | 風力発電 | 全国1位 |
(3) | 地熱発電 | 全国3位 |
(4) | 中小水力発電 | 全国1位 |
(5) | バイオマス産業都市数 | 全国1位 (37市町村、2021年7月時点) |
※導入ポテンシャル…さまざまな仮定の上で推計した利用可能なエネルギー資源量。
出典(1)~(4)/環境省「再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)」、出典(5)/農林水産省「バイオマス産業都市選定地域数」
森林などの二酸化炭素吸収源の確保
全国の22%の森林面積を占める北海道の優位性を生かし、適切な森林整備・保全を進めるほか、建築物などでの道産木材の利用促進などにより、吸収源の確保と炭素の固定を進めます。
※炭素の固定…植物が空気中から取りこんだ二酸化炭素を炭素化合物として留めておく機能。
ゼロカーボンな暮らしに向けて
北海道は積雪寒冷、広域分散型の地域特性により、冬季の暖房用灯油や自動車のガソリンなど化石燃料の使用量が多く、一人当たりの排出量は全国の約1.3倍となっています。
北海道 | 全国 | |
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温室効果ガス排出量 | 7,017万トン | 13億800万トン |
一人当たり排出量 | 13.1 トン | 10.3 トン |
※数値は二酸化炭素排出量
出典/「北海道地球温暖化対策推進計画」に基づく平成30年度の施策の実施状況等について
脱炭素社会の実現に向けては、温室効果ガスの削減とともに快適で豊かな暮らしを意識しながら、暮らしの中の行動を選んでいくことが道民の皆さん一人一人に求められています。その取り組み事例を「3つのS」で紹介します。
ゼロカーボンの地域づくり、進めています!
道民の皆さんが健康で快適に過ごすことができ、真に豊かで誇りを持てる地域社会を目指します。
持続可能な地域づくりを目指して動き出したまちづくり会社 (ニセコ町)
株式会社ニセコまち 事業推進室 室長 宮坂 侑樹さん
ニセコ町は国の「SDGs未来都市」に選ばれ、町では温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げています。現在進められている第2次ニセコ町環境モデル都市アクションプランでは、2019年からの5年間で、温室効果ガスの削減に取り組むだけでなく、地域課題を解決し、より良い暮らしを形づくることを目指しています。
そうした取り組みの実施主体となるまちづくり会社「ニセコまち」は、町や地元事業者などが出資して2020年7月に設立され、街区整備事業やエネルギー事業などを担っています。
街区整備事業では、温室効果ガス排出量を従来の半分に抑えた環境配慮型住宅の建設を進めることによって、地域課題である住宅不足の解消を図り、経済の活性化を促します。また、エネルギー事業では、街区に設けるエネルギーセンターの運営管理や公共・民間に対する省エネ関連事業を展開していきます。
こうした取り組みが、持続可能な暮らし方や地域づくりの新たなモデルとなることを目指しています。
(写真)環境配慮型街区の完成イメージ
畜産バイオマスを活用したエネルギー地産地消のまちづくり (上士幌町)
上士幌町企画財政課 主査 老月 隼士さん
酪農・畜産の盛んな上士幌町は、人口約5,000人に対して4万頭以上の牛が飼養される地域。産業の拡大に伴う増頭・増産により、家畜ふん尿の適正処理は近年の地域課題となっていました。
そこで、町内農業関係機関で調査研究を進め、その後、酪農・畜産農家や農協などが出資するバイオガスプラント運営会社を設立し、2017年からバイオガスプラントの整備に着手しました。また、同年には道の支援を受け、町や農協など6団体が連携し、畜産バイオマスによるモデル地域の構築を進めてきました。
この事業では、家畜ふん尿を発酵させてバイオガス発電を行うだけでなく、発酵後の消化液を固体と液体に分け、固体は牛の寝わらとして、液体はデントコーン畑などに液肥として再利用しています。また、連携先の有限会社ドリームヒルでは、余剰バイオガスを熱源にして、イチゴやブドウなどのビニールハウス施設園芸に取り組み、ジェラートやケーキに利用し販売しています。
現在、電力小売を担う「かみしほろ電力」が、町内の公共施設や農家、一般家庭などに供給し、バイオガス由来の電気による地産地消のしくみをつくっています。
(写真)有限会社ドリームヒルのバイオガスプラント
ゼロカーボンとデジタルとの融合
雪でエネルギーと産業を生み出す次世代型データセンター (美唄市)
美唄自然エネルギー研究会 会長 本間 弘達さん
美唄自然エネルギー研究会は産学官の団体で、雪を資源として生かすための調査研究や開発・普及を行っています。10年以上をかけて取り組んできた「ホワイトデータセンター構想」は、大量の電力を必要とするデータセンターの冷房に、雪の冷熱エネルギーを利用するしくみのことです。データセンターの多くは首都圏にありますが、美唄市に誘致することにより、サーバーの冷却費用の大幅な削減が可能です。
2010年から実証実験を重ねてきた結果、商用化が可能になり、共同研究体の1社が2020年、美唄市で事業を開始。ことし4月に「株式会社ホワイトデータセンター」が創業しました。道路排雪による雪冷熱をデータセンターの冷房に使うほか、サーバーからの排熱を、ウナギやアワビなどの陸上養殖施設やトマトなどの植物工場の空調に活用しています。さらに、地産地消型の再生可能エネルギーの発電事業によって「温室効果ガス排出ゼロ」を目指しています。
雪を資源としてエネルギーや食料の自給に生かすことで、50年後の市民にも誇れる環境づくりを目指しています。
(写真)ホワイトデータセンター
特集に関する問い合わせ先
環境生活部気候変動対策課
電話番号 011-204-5334